めまい


くらくらする。

太陽の光によく似た髪も空のような草原のような海原のようなその瞳も大木のような身体も全部全部、ただひたすらに私一人だけを求めて私一人だけに向いていて。
私ですら神ですら気付かない些細な変化に気付いてはいつでも優しく私を包み込む。
普段の鈍感っぷりは何処へ行ったのやら、私の事に関しては何でもお見通しだし、それでいてやたら男前にその全てを受けとめるんだ。

そんな風にされたら幾ら大天使たる私だって形無しで、まるで子猫や幼子のようにされるがままになるしかない。
私だって、愛するイーノックの事をもっともっと理解出来るようになりたいし頼られるようになりたいのに。
そう言うと神もミカエルも他の連中も、呆れたような眼差しを向けてくるだけなので最近は言わないけれど。

嗚呼、イーノックの仕事がそろそろ終わる筈だ。
今日もきっと顔を合わせた瞬間に抱き締められて熱烈な口付けをされるんだろう。そして耳元でこう囁くんだ「会いたかった」って。私はそれに一番良い答えを用意しなければならない。

本当に、くらくらする。