幾度目かの誕生


気が付くと、眠る際に繭が身体を覆うようになっていた。
初めこそとても驚いたが、慣れたらこれが中々心地良い。
うつらうつらした頃にしゅるしゅると白い糸が身体に巻き付き、柔らかかつ安らかな睡眠を約束してくれる。
その上、繭に包まれて眠ると普段の倍以上疲れが取れ、非常にすっきりした目覚めが待っている。実に素晴らしい。
こんなに快適な眠りを一人で独占するのは勿体ないので、ルシフェルも誘ってみた。

「ふむ、確かにこれは見事だな」
素晴らしいよ、また誘ってくれイーノック。機嫌の良いルシフェルがにこやかに言う。
彼の白い肌がいつも以上にきらきらと輝いていた。どうやらルシフェルも繭が気に入ったらしい。
しかし、ああ、どうしよう。
「あなただけ繭に包まれてしまうと、俺は寂しい」
どうしよう。ぽつんと告げた言葉に、ルシフェルは円く目を見開いた。
そうして一拍置き、なんだそんな事かと言わんばかりに破顔する。
「だったら、くっついて寝て同じ繭の中に居ればいいじゃないか」
あっさりとした返事に目から鱗が落ちる気分だった。

それから私達は共に繭の中で眠っている。今この時もずっと。



END