スイマーよ!!


魚の身体は泳ぐ為のものであり、鳥の身体は上手く飛べるように出来ている。
そんな些細な事象一つ取っても神の創造の素晴らしさに舌を巻き、またその繊細な造形に対し感動に打ち震えた。

天地創造、とは行かないまでも、それなりの年月を天使として過ごしたサリエルは、アダムとイヴが創造された頃から人間というものをその目で見て知っている。
そうして彼はこう思った。人間は、愛し合う為に出来ていると。
堕天をした最も大きな理由は勿論、人の愛を知りたかったからであるが、それとは別に自分は一体何の為の存在なのかを知りたかったと言うのもある。

そうして降り立ったこの地上。間近で眺めるものは何もかもが新鮮で、魚のように泳ぎ、鳥のように飛び、人のように愛し合う彼もその一つだった。
天界では殆ど言葉を交わした事は無かったが、あらゆるものに感動し柔らかく微笑む彼は、きっと喜びというものを現す為の存在なのだろうと確信する。口に出せばシャイなアルマロスは床に溶けて逃げてしまうだろうから、言わないけれども。

それはとても素晴らしい事のような気がして、サリエルは今日もまた大地と海を目の前に、艶やかに微笑んで見せたのだ。