いつもより早く目が覚めたから


何の切っ掛けがあったのから解らないが、ともかく眠りの淵から意識を浮上させた私がまず最初に行ったのは、共に眠りに着いた筈の男の捜索であった。

残念ながらどれだけ目を凝らしてもイーノックの姿は見えなかったが、背中に感じる暖かさと胸元に回った褐色の腕に、背後から抱き締められているのだと気付くのは容易な事で、未だ頭の上でふよふよと旋回している睡魔を引き寄せるべきか手放すべきかと何とも平和な葛藤をしていた。
瞼を薄く開いたり閉じたりしていると、胸元の手が悪戯に動くのが感じられて思わず口元が緩む。

心地好い感触に誘われるようにそちらに意識をやっていると、不意にある事に気が付いた。
イーノックの手は撫でているのではなく、明らかに、胸を揉んでいる。
確かに私は男にも女にもなれる身体である、が、普段は男性体を取る事が殆どで稀に女の身体になる事があったとしてもそれは下半身だけの話だ。
元々イーノックは異性愛者で、その上結婚歴もある。意識しているのかいないのかはともかく、女性特有の柔らかな身体を求めてしまうのは仕方ない事だろう。

その手の動きは次第に大胆になっていき、耐えきれなくなった熱い息が零れた。
「起こしてしまったか?」
耳元で笑いながら乳首を強く摘むので、どうあっても身体は跳ねる。簡単に翻弄されて悔しいような気はしたが、それよりももっと苛めて欲しい。
「ん…こんな、の、っ…起きるに、決まって…あぅ!」
首筋に吸い付かれて言葉が詰まる。尻に当る熱い塊に、このままする気なんだろうなと考えていたら、身体をひっくり返されてそのままイーノックがのしかかって来た。

「…なぁ、イーノック。」
「ん?」
「……やっぱり、胸、あった方が良いか?」
太い首に手を回しながら呟くと、コイツはふむと一つ頷いてから犬のように胸を舐める。性的な快感よりもくすぐったさが勝って思わず笑うと、気の緩んだその隙に指で性器を握られて盛大に喘いだ。
「大きさはどうでも良いが、敏感な方が弄り甲斐があるかな。」
しれっとした顔で言い放つムッツリに、気にした私が馬鹿みたいじゃないかと蹴り掛かったら、足を捕まれ舐められたので諦めて身を任せる事にした。