二泊


玄関の扉を開いた瞬間、満面の笑みを浮かべたルシフェルが出迎えてくれて驚いた。
「お帰り!」
「た、ただいま。…何かあったのか?」

何度となく瞬きを繰り返して、今にもこちらに飛び付かんとするルシフェルの動向を見つめる。しかし彼はそれ以上のアクションは何も見せず、反対に俺が持っていた鞄をその場に取り落としてしまった。
「ふっへへ、あのな、コレを見てくれ。」

そう言って手渡されたのは一枚の紙切れ。少し大きめの商品券のようなそれに書かれた文字を読み上げ、思わず叫び声を上げそうになった。
「えーと、『高級温泉旅館二泊三日食事付きペア宿泊券』…ってルシフェルこれ!」
「ふっへへ、商店街の福引きで当たったんだ。」
ルシフェルは空になった両腕を俺の首に回すと、いつ出発しようかと無邪気な声で問いかけてくる。

それを抱き締め返して玄関先で抱き合ったままぐるぐると回っていると、開いたままの扉の向こうでご近所さんが不思議そうな目を向けてきたのでそこで漸く我に返った。

嗚呼、でも、本当に楽しみだ。