愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない


もう二度と歌う事が出来ないのだと、そう知った時のアルマロスの嘆きは見ているこちらまで胸が張り裂けそうな程に切ないものだった。
歌と踊りをこよなく愛した芸術家であると、彼を知る誰もがそう知っていたのに、今アルマロスの厚い唇から漏れるのは嗚咽と言葉にならぬ呻き声だけ。

大地にひれ伏し泣き叫び続ける彼が、一体何をしたと言うのだろう。堕天は罪だ。けれど、半ば唆されたように共に大地に堕ちた彼が、声を失わなければいけない理由は何なのか。

「…アルマロス。」


「アルマロス。」
「……。」

漸くこちらを見た瞳は赤く腫れ上がっており、ああやはり、肉の身体は素晴らしいなと少々彼には申し訳ない事を考える。天使の時には縁の無かった泣き顔は、だってこんなに愛おしい。
「俺はお前を傷つけたりしない。一緒に行こう。」

伺うようにおずおずと伸ばされた手は、その大きさとは正反対に弱々しく震えていて。
彼を守ろうと誓うのには、それだけで充分だった。