Imyアイマイ


朝から顔色の悪かったルシフェルがついに倒れたのは、昼休み直前の事だった。
迎えに来た母親に連れられ病院へと向かう姿を見てイーノックの方が死にそうな顔をしていたので、級友達は大丈夫だよと口々に励ましの言葉を贈った。

そして、その翌日。

「イーノック!」
学校へ着くなり声を張り上げたルシフェルは、昨日とはうってかわって元気いっぱいだ。その様子に、ああ良かったとほっと胸を撫で下ろす。
「イーノック、すごいことが分かったんだ!」
頬を可愛らしいピンクに染めてそわそわと落ち着かない。興奮しきったルシフェルに、はて一体どうしたのだろうかと首を傾げた。
「あのな、私、女の子だったみたいなんだ。」
「え?」

掛けられた言葉に、不思議そうに目を瞬かせて説明を求める。理解が追い付かない。
「りょうせい?って言うらしい。男の子だけど女の子だって言われた。」
「え…じゃあ…。」
「ああ、これでイーノックとけっこん出来るぞ!」
ルシフェルがぎゅっとイーノックの服を掴むと、イーノックは負けじとルシフェルの身体を抱き締め頬に口付ける。

「イーノックとルシフェルけっこんするの?」
「おめでとー。」
するとそのやりとりを聞いていた周りの生徒は、普段通り目の前でいちゃつく二人に向かって次々と祝福の言葉を投げ掛け、教室中が柔らかな雰囲気に包まれた。
「あ、先生おはよー。」
「イーノックとルシフェルがけっこんするんだってー。」
何の事なのか解らぬままにも取り敢えず、式には呼んでくれよと返した担任は、後日ルシフェルの両親から詳細を聞かされてそれはもう驚き、ルシフェルの両親は担任からクラスで起こった一部始終を聞いてあの馬鹿と呟き頭を抱えたのは別の場所での話である。

ただただ本人達は幸せだった。