保護者ですから


イーノックは本当に人の話を聞かない。
何度目か解らない復活の後、くどくどと説教を垂れるのにもいい加減飽きてきた。確かに喋るのは嫌いではないが、そろそろ次のステージに進んでも良いのではないだろうか。

今もそうだ。自信に満ち溢れた表情で、いつものあの言葉。

「大丈夫だ、問題ない。」

その輝かしい笑顔に負けて何も言えなくなるが、明らかに大丈夫とは言えない姿で。

何度だって生き返らせる事は出来るが、だからと言って彼がむざむざ死ぬのを良しとする訳でも無ければ、他人の為にその身を削る彼に心が傷まない訳でもない。


母の心境、とはこう言うものを言うのだろうかと、堕ちていった天使の一人が脳裏に過った。



「ルシフェル。」


不意に、落とされたのは


柔らかな口付け



「いつも有難う。」


なんだ



なんなんだこの気持ちは。



保護者などと言ったのは訂正しよう。私のエゴだ。君を見つめていたいという、只の。