妻を待つ


白魚のような指先は背へと回り、しなやかで長い脚は腰に巻き付いている。耳元では啜り泣くようにすんすんと息をする音が聞こえるのが堪らない。
所謂『だいしゅきホールド』状態で抱き締められたイーノックは突き上げる動きすらままならなかったが、それでも満足そうに自分の組み敷いている相手を眺めた。

ぴたりと胸をくっつけている所為で、嬲って弄った尖りが先程からつんつんとイーノックの胸板に辺り、何とも言えない熱が込み上げる。
震えるルシフェルに対しては確かに申し訳無いと思っているのだが、それでも我慢仕切れずにぐるりと腰を回してやると、啜り泣きが小さな叫びに変わって鼓膜を揺らした。

「ひっ!や、…ま、待って…。」
言葉と同時にイーノックの元へとやってきたのは、全身の収縮。
腕も、脚も、そしてイーノックの分身を包んでいる内壁も。
ぎゅうっと全てを締め付けるそれらに思わず小さく呻くと、愛しい相手を更に懐柔すべく勝手知ったる弱い部分をぐりぐりと刺激した。
「ルシフェル。」
「ちょっと、ちょっとで、良い、か、ら。待っ「待たない。」

だって、だってそうだろう。恋人にこんな風にねだられて求められて。耐えられる方がどうかしている。

相変わらず回った腕は緩みを見せなかったが、それさえもイーノックにはどうでも良い事柄であった。
腰を大きく揺らして暖かな肉を苛めると、甘く啼く声が部屋に響く。
「誘って見せてくれよ。」

にこりと笑いながら望んだ、その言葉の返事を待つのは少しの間だった。