感情対価


天使というものは言葉にせずとも相手が何を思っているのか、自分が何を考えているのかくらいは簡単に伝え合える。
それは一見便利なようにも思えるが、逆を言うと「私はこんな気持ちである」と言うことの「こんな」の部分を感覚で済ませてしまう為、語彙というものがどうしても貧困になりがちなのだ。
その点、人間はどうにか言葉にしなければ思いが相手に伝わらない為、その種類はどんどん豊かになっていく。

どちらが良いなどと一概には言いきれないが、少なくとも、私はコイツにその事を伝えるべきでは無かったと、遅い後悔をしてしまうのは仕方がないだろう。

「ルシフェル!」
ああまただ。だからそんなに瞳を輝かせるな私の手を取るな。

初対面の時点で性的な意味を持った視線で見られていたのを感じたから、からかってやろうとネタバラしをして笑いながら指摘してやった所、真っ赤になって恥ずかしがるかと思っていたコイツは、一瞬驚いた後直ぐに真顔になって今しているように私の腕を掴んできたんだ。
「私の考えている事が解ると言うのなら、遠慮はしない。」
せいぜい朴訥な愛の言葉でも囁かれるのだろうと思っていた当時の私を殴り飛ばしてやりたいよ全く。

「嗚呼ルシフェル、今日も貴方は変わらずどんな星よりも宝石よりも美しい。俺の理想、俺の天使。そのしなやかな脚を割って可憐な花園に一物を突っ込んでやりたい、貴方が汚されて泣く姿が見たいんだ可愛い小鳥。どれだけ愛の言葉を告げても足りないよ愛している抱きたい結婚してくれ。」

一息にそれだけ言い切ったコイツは、表面上はニコニコと笑みを絶やさずに、握った私の手へと口付け熱い眼差しを送って来る。
コイツが黙るのが先か私が懐柔されてしまうのが先かなんて、考えたくもない。