言葉じゃ伝えきれないから


すん、とその小さな鼻をひくつかせたかと思うと、次の瞬間、ルシフェルは俺の腋下に舌を這わせて滴る汗を舐め取り始めた。

「る、ルシフェル…。」
何度されても慣れない行為に、ついつい情けない声が漏れてしまう。
人間の汗やら体臭やらと言うものに興味があるのだと言われたその時、何でそんなものにと思わないでは無かったが、自分たち天使に存在しないものなのだから気になるのも仕方が無い事かもしれない。

しかしそれでも、駆け回った後の汗まみれの身体、おまけに水浴びもしないままでルシフェルに舐められるのは恥ずかしいと言うか申し訳ないと言うか、兎に角勘弁して欲しかった。
汚いから、と幾ら訴えても彼は聞いてくれず、ふんふんと動物のように体臭を嗅がれて恥ずかしくなる。

「ルシフェル…頼むから…。」
絞りだすようにしてそう懇願すると、ルシフェルは片眉を跳ね上げてやれやれと言わんばかりの表情で漸く舌をしまった。しかし顔はまだ俺の胸元であるし、離れる気配も無い。どうする気なんだろうか。

「解った、じゃあこうしよう。代わりに私の身体も好きにして良いぞ。」
一体何が解ったなのか、彼はそう言ったかと思うと、背中に回していた腕の片方を放してジーンズの上から俺のモノを撫でてきた。
柔らかい舌の感触に既にかなり硬くなっていた相棒は、その指先の繊細な動きに瞬く間に煽られ押さえ切れない熱を孕む。

「なぁ…イーノック。」
こんな風に甘えられて、拒める訳が無い。

荒くなった息を隠しもせずにルシフェルの首筋を舐め上げると、人とは違う甘い味が口一杯に広がった。