その笑顔は反則だから


神の下した洪水計画にイーノックが異議を唱え、それに対して神の出した答えは「ならば堕天使を捕縛し回収しろ」というもの。
これだけを聞けば試練を与えたと取れるかもしれないが、最高の装備に四人のアークエンジェル、更には時間を操れる私による死を回避するサポート付き。これは実質、イーノックの意見を全面的に認めたようなものだ。

まぁ、幾ら地上の全てのしがらみを捨てたとは言っても、流石にその全てが流されると言うのは奴にも耐えられ無かったのだろう。
その心をちゃんと理解する事は出来ないが、理論として納得は出来る。だから私を始めとする、アークエンジェルも心の底からイーノックのサポートをしているのだ。
とは言っても、やはり失敗はするし幾度となく指を鳴らす羽目にもなる。この場所とはどうやら相性が悪いらしく、これでもう五回目だ。

「大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題無い。」

ああ、まただ。
その自信は何処から来るのやら、最初に人間界の装備で挑んでボロ負けしたのを忘れた訳では無いだろうに。
けれど、その自信満々の笑顔を見ていると、こちらまで大丈夫だと言う気分になってくるから不思議なものだ。

待っているよ、お前が此処まで登って来るのを。
待っているよ、お前が私の手を取るその日が来るのを。

私も、すっかりお前に当てられてしまったようだからね。