公認ストーカー


マーターを蹴散らし、武器を奪い、襲い来る使役獣達を浄化する。
一連の事柄にも大分慣れてきたなと心中で呟くが慢心は禁物だ。その油断が隙となり、一瞬の隙が命取りとなる。
最後の一体を倒したところで周囲を見渡す。動く影が無くなったことを確認すと、漸くほっと息を吐き、目前に立つ黒い影へと近づいた。

「セーブを頼む!」
「ああ、任せておけ。」
薄い笑みを浮かべたルシフェルはいつもの板を操り神に連絡を取ると、一歩を踏み出して睫毛が触れ合いそうな程に顔同士の距離を縮める。
その瞼が閉じたのを合図に、小さな音を立てて唇が触れ、そのまま舌が、唾液が絡み合った。

一瞬の抱擁から始まったその行為は、セーブポイントを一つ越す毎に少しずつエスカレートしてゆき、片手を越えた今では舌を絡めて胸をまさぐるまでになっている。
角度を変え、その甘い唇を存分に堪能したところでルシフェルの身体がふと離れた。名残惜しいが、今日はここまでらしい。
上昇した熱を冷ますのには大変な葛藤と努力を要したが、例え無理矢理進んだとしても彼がその気になれば一瞬で振り払われてしまう。先の行為を望むのならば、進むしか無いのだ、俺自身が。
「大丈夫か?」
「…大丈夫だ、問題無い。必ず次の貴方の場所まで辿り着く。」
「ふっへへ、それじゃあ楽しみに待っていよう。」

嬉しそうにそう言ってくれると言う事は、期待をしても良いのだろうか。これが俺を焚き付ける為だけのものではなく、ルシフェルも望んでいる行為であると。
嗚呼、追い掛ける事がこんなにも楽しい事だなんて知らなかった。

知らなかったんだ。貴方と出会うまで。