デートプラン


イーノックがメタトロンへと昇天してからというもの、互いに今までよりもずっと忙しくなり、二人きりで会える時間も中々取れなくなっていた。
会えば会ったで、それまでの空白を埋めるかのように求め合い、抱き合っている内に時間は過ぎてしまい、また直ぐに離ればなれになってしまう。

願わくば、もっとこう、ゆっくりと時間を気にせずいちゃつきたい。
一緒に旅をしていた頃のように、何気ない事に笑い合ったり、綺麗なものを見て感動したり、心を寄り添わせたいのだ。

時間を操るのは、自分達以外の全てが止まってしまって景色を堪能出来ないからなるべく使いたく無かったのだが、この際あまり文句は言っていられない。
イーノックが部屋の扉を開けた瞬間、ぱちりと指を鳴らしてその空間を固定させた。

「ルシフェル?」
「デートをしよう。」
彼が何かを言う前にそう遮ると、逞しい首筋に腕を回して軽い口付けを一つ。いつも話を聞かない彼の注意を向ける、取って置きの方法だ。
ぱちりと瞳を瞬かせたイーノックのその碧の中に、驚きと同時に期待が孕まれているのが見えた。猫がするように彼の頬に自分のを擦り寄せながら、言葉を続ける。

「久しぶりに下界にでも行かないか?」
「良い案だな。ああ、それなら前に言っていたニホンと言う国が良い。貴方の気に入りだと言う場所が。」
「それじゃあお前の分の服も用意しなければな。ジーンズはあれで良いとして、問題は上着か。」
考えている事が口から零れ落ちるのは最早癖のようなもので、さてでは具体的に何処に向かおうなどと言いながら、腕は首筋から胸へと移動して服の中へと侵入した。
それはイーノックも同じで、私のシャツのボタンを外すとジーンズの上から腿や尻を掴み、その動きの所為で息はどんどん熱くなり、腰が重たくなってくる。

勿論、勿論デートには行く。けれど、折角時間を止めたのだから、動けなくなる程抱き合いたい抱かれたい狂いたい。

最後にこうして時間を止めたのはいつの事だっただろうかと思い出そうとしたが、唇が胸の尖りに触れた辺りで、考えるのを止めた。