寝起きをね


イーノックがその瞼を開いた時、目の前には愛しい恋人が純真無垢な寝顔を曝してすぅすぅと小さく息を吐いていた。
直ぐには覚醒しない脳味噌を、何度もまばたきする事によって少しずつ現実へと引っ張り出そうとすると、それと同時にルシフェルの見た目より柔らかな頬や薄い唇、長く黒々とした睫毛に目を奪われる。

昨夜あれだけ発散した筈の熱が、一眠りしただけで再び燃え上がっていくのが解って、寝惚けた頭で若いなとまるで他人事のような感想を抱いた。
寝起きというのも相まって、みるみる臨戦状態になっていく下半身は、やがて直ぐ隣で無防備な姿を見せているルシフェルにぶつかる。

肩を抱いていた手を頬へと滑らせると甘えるように顔を預けてきたので、ゆっくりと身体を起こして未だ夢の世界に居るルシフェルに覆い被さり、触れるだけのキスを落とした。
ルシフェルはその馴染みのある感触に反応したのか、ころりと寝返りをうつと眠ったままにも関わらず腕を伸ばしてイーノックの頭を抱き締める。
愛を交わした後そのまま眠ってしまったので、互いに一糸纏わぬ姿である事は解っていたが、充血してつんと尖った胸の先端を実際に見てしまうと抑えがきかなくなり、欲望のままにそこに舌を這わせて下半身をまさぐった。

「ん、ぅ…?」
その刺激で意識を浮上させたルシフェルに気付くと、性急に脚を抱えてから昨日の名残でまだ少し柔らかいままの後孔に猛ったものを突き刺した。
「ひ、あぅ、ぁんっ!」
まさかこんな風に寝込みを襲われるとは思っていなかったのだろう、未だに状況が呑み込めていないらしく寝起きのぼんやりとした瞳のまま、為す術もなく揺さ振られ責められる。

「ルシフェル、ルシフェル!」
「ひ、あ、イーノック、ぅあ、あ。」
首に回った腕の力が強くなるのと同時に、抉っていた内壁がきゅっと締まると、それに誘われるようにイーノックは体液を最奥に叩きつけた。

合意も得ずに襲ってしまったという申し訳無い気持ちが半分、でもルシフェルも抵抗しなかったしと言う気持ちがもう半分。そこに、この身体は俺のものなんだしという独占欲が一匙入れば結論は出たも同じだ。
絶頂の余韻か、腕の中で震える白い身体を宥めるように撫でて何度もキスを送ると、少しずつ現状が呑み込めたらしく真っ直ぐに目の前の碧を見つめる。

そして、口にした言葉は。


「イーノック…。もっと。」
とろりと溶けた瞳で見つめられ、解放した筈のイーノックの熱は再び燃え上がった。