キスが好き


ちゅ、ちゅ、と小さな音を立てて繰り返される口付けは、最初は確かに傷を癒す為のものであった筈なのに。気付けば舌を絡め、互いの服の中にまで唇を泳がせる行為へと変わっていた。

「んっ。」
分厚い右手に祝福を送っていると、頭を下げて胸に吸い付いていたイーノックが紅い跡を残したので、掌に向かって小さく声を吐き出す。
胸や首筋を散々に舐められ噛まれ吸い付かれて、ルシフェルは下半身に緩やかな熱を感じるのを理解すると瞼を閉じてその甘やかな感触をじっくりと感じ取る事に専念する。

唇はどんどん下降し、もう触れていない場所は無いだろうという頃合いになって漸く、足の指を探っていた舌を離すと真っ直ぐな瞳でルシフェルを見上げた。
「ルシフェル、好きだ。」
「私だって。お前を愛しているよ。」
白い腕を伸ばして金糸を弄ぶ。太陽の下がよく似合うと言うのは事実だが、月明かりに照らされ金と銀が混ざって輝く様子だって、天の川みたいでロマンティックだと。イーノックの体温でふわふわになった脳で考える。

何度触れても飽きる事なんか無くて。今日もまた、互いの心を満たすべく、優しく激しく奪い合って与え合った。