頭をよくしてあげよう


この男でもこんな表情をするのか、と、新たな発見に驚いたと共に面白くなった。
室内に妙な香りが充満していたのは解っていたが、このような作用をもたらすものだったとは、全く堕天使の連中も愉快な事を考えるものだと口角を釣り上げる。

イーノックもマーター達も、興奮が収まらないといった様子で刃を交えており、一通り纎滅した後も荒い息を吐いていたイーノックは、どうするのかと思えば私の方へと向かってきた。
一瞬敵と間違えているのかと考えたがそうでは無いらしく、アーチを投げ捨てたと思ったらその場に押し倒されて、そのまま服に手を掛けられたので目を丸くする。

(…まぁ良い。)
交わり自体は禁忌では無い。私は男性型だからネフィリムは生まれないし、イーノックの事は気に入っている。正直、一度経験してみたいと言う気持ちもあり、言ってしまえば素直に足を開いた。
抵抗を見せなかったのが幸いしたのか、イーノックの抱き方は荒っぽいながらも私を傷つけるようなものではなく。中々上手いんじゃないかなぁなどと暢気な感想を心中で漏らした。


***


何度目かの精を放った時、奴は漸く我に返ったらしく、真っ青な顔をして小さく私の名前を呼んだ。
「ルシフェル…。」
「あっ…ん…?何、だ。やっと正気に戻ったか。」

ずるりと引き抜かれる感覚に眉を寄せて息を吐く。啼き過ぎて喉が痛かったが、返事をしない訳にはいかない。
「す、済まない!お、俺は何て言う事を…!」
あからさまに狼狽えて、放っておいたら今にも泣きそうな態度に腹が立ち、軽く殴ってやる。

「散々好きにしておいて何だその態度は。凄く良かったくらい言えないのか。」
まるでこっちが悪い事をしたみたいじゃないかと溜息を吐くと、真っ赤になりながら手を握られて見つめられた。
「責任は取る。」
「は?」
「この旅が終わったら結婚しよう。」
真面目な表情に思わず笑いが零れる。
それはフラグじゃないのかと思って更におかしくなったが、断るつもりも無いので腹を抱えながら頷いた。