ルシフェルがふたなり

グリグリ眼鏡を拾う


メタトロンへと昇天した俺を誰よりも歓迎してくれたのは、可愛い恋人であるルシフェルだった。
彼は熱っぽい笑みを浮かべて俺の首に腕を回すと、全てを見透すように赤い瞳を瞬かせる。

「力をどう発散したら良いかまだ解っていないんだろう?」
好きなだけ抱いてくれ、と耳を舐めながら囁かれて、恥ずかしながら全く我慢が出来なかった。
柔らかな寝台に押し倒し、真っ白な首筋に鼻を埋めるともう堪らない。彼から薫るその芳香は仄かに甘く、食べ物のような花のようなとにかくむしゃぶりつきたくなるとても良い薫りで、鼻を鳴らして嗅いだ後にべろりと舐めて噛み付く。

上着のボタンを外し白い肌を撫でた後、何時ものように黒のジーンズを脱がせて驚いた。何度も見た彼の身体は、今までは確かに男のそれであった筈なのに、今自分の目の前に曝け出されている白い脚の間には、男のものと女のものが同時に存在している。

「天使同士ならネフィリムが生まれる心配も無いからな、昇天したお祝いだ。…貰ってくれるか?」
恥ずかしそうに俯きながら、それでも視線だけはしっかり俺に向けてそんな事を言われては我慢出来る筈も無く、初めて女の肌を見る少年のように興奮して手を伸ばす。
初めて触れる女の部分は既にしっとりと熱を孕んでいて、初めての彼に無理をさせてはいけないと言う事は解っているのに本能はその警告に耳を貸さず、昇天しても性欲は消えないものらしいと言うのを初めて知った。

「ルシフェル、愛している。」
「嗚呼、私もだよイーノック。」
熱っぽく囁いた愛の言葉が、少しでも贖罪になれば良いのに。



***



少々、いやかなりやりすぎてしまったかもしれない。
最後の方など焦点の合わない虚ろな瞳で、人形のように俺に揺さ振られているだけだったような気がする。
孔と言う孔を犯し尽くし、まさしく凌辱と言う言葉が相応しいようなその蛮行は、間違いなく俺の意志で俺により行われたもので。たっぷり味わった白い身体は、丸一日の休養の後でも立ち上がれる程には回復していないらしかった。

「死ぬと言うのがどう言う事か、理解したよ。」
苦笑混じりにそう言われて、返す言葉も無くうなだれる。
「本当に…済まない。」
自分はこんなにも我慢の出来ない奴だったのかと情けなくなり、ただ彼に謝ることしか出来ない。

「ふっへへ、そう深刻になるな。我を忘れる程求めてくれて、私は嬉しいぞ?」
まだ身体は辛いだろうに、動物でも撫でるかのように俺の頭や耳元を軽く掻き慰めてくれる。
触れ合うだけの小さなキスを何度か繰り返した後、ぺたりとした白い肌を撫でて幸せそうに呟いた。
「孕むかな?」

いつか、そう遠くない未来に貴方との子が生まれたら、その時は俺の全てをもって貴方とその子を守り、祝福しよう。
そんな想像をしながら、そっとその指に祝福をした。