ごめんね、愛してる


「神からお前のサポートを仰せ使ったよ。」

そう言うとイーノックは目を丸くして驚いていた。
まぁ当然だろう、幾ら私達が気の合う友人だからと言っても、彼と私では明らかに身分が違う。だが私以外の者がこの壮大な任務のサポートを出来るとは思えないし、何より私が誰かに任せたいとは思わなかった。


「冷えた岩肌は体温を奪う。これを使うと良い。」
その夜、指を鳴らして出現させたのは柔らかい寝具。ついでに火も焚いてやって、か弱い人の子が寒さに震えぬようにと思い付く限りの準備を整えてやる。
血の臭いを落とす為に水浴びを済ませたイーノックは、暫くそれらを興味深そうに見つめていた。

「ルシフェル。」
名前を呼ばれたかと思うと、次の瞬間抱きつかれた。触れる肌は冷たく、人間にこの気温は辛いのかと直ぐに思い至ったが、流石に少々気恥ずかしい。
まあ火が遠いから仕方がないか、寝具に移ってもいけないからこれ以上近寄る訳にもいかないし。

「寒いのか?ふっへへ、子供みたいだな。」
可愛い奴めと笑って未だ濡れたままの髪を撫でると、何故か寝具に押し倒すように…と言うか完全に押し倒された。

「え?」
「俺の、サポートを、してくれるんだろう?」
途切れ途切れの言葉と共に、ごり、と押し付けられたのは下半身。それはジーンズの上からでもはっきり解る程に熱く硬くなっている。
「いや、待て待て確かに昼夜を問わずサポートすると言ったのは私だが、こんなサポートは対象外だ。」
両手を纏めて頭の上で押さえられ、まさぐる手を止める事が出来ない。この馬鹿力、と思っている間にも、厚い掌は殆ど意味を成さないシャツの釦を外し私の肌を撫で擦る。

「ん、ちょっ…イーノック、やめ…!神は許さないぞ!」
「貴方を俺のサポートに任命したのは他ならぬ神だろう?全能のあの方がこの事態を予測出来ない訳がない。」
そう言われると言葉に詰まった。確かに、神は人間と天使の交わり自体はどうでも良いと思っているし、実際そう言うのもこの耳で聞いた。
今私がこんな事になっているのは全て自己責任だと言われてしまえばどうしようもない。

「ひっ…ん…。」
イーノックの言葉に意識を持っていかれた隙に、胸の尖りに吸い付かれた。
私は情けない泣き声を上げて肩を竦めることしか出来ず、その荒々しくも優しい愛撫にただただ翻弄される。

「ずっとこうしたかった。愛してる。愛してるんだルシフェル。」「イーノック、止めっ!」
肌に口付けを繰り返しながら囁かれると、胸の奥から何とも言い難いむずむずとしたものが沸き上がってきて、下半身が熱くなった。
「あっ、あ!ひっ!!や、待って、待って!」
しかし制止は届くこと無く、溢れた蜜を掬い、ぐちぐちと入り口を解されて、とうとうイーノック自身が私の中へと入って来る。
痛みに鈍感な仮の肉体は奴の巨大なモノを受け入れても裂けることもやたらに苦しむことも無かったが、代わりにその熱と形をまざまざと脳髄へ伝え、おかしくなる程イーノックの存在を刻み付けた。
「好きだ、ルシフェル、好きなんだ。」
うわごとのように繰り返される愛の告白は、朦朧とした私の脳髄を溶かして痺れさせる。

「や…ぁ、おっき…。」
気付けば自らその背中に縋り付き、更なる快感を求めて浅ましく腰を振る自分が居た。
胸の突起に吸い付かれて、びくびくと内腿が痙攣する。
「あ、だ、駄目、吸っちゃ、や、待って、待って待って……ぁ…!」

胎の中に熱い液体が満ち、ああ出されたんだなと何処か他人事のように理解すると、目の前が歪み、気が付くと情けない姿で泣きじゃくっていた。
「ひぐっ、ま、待てって、うっ、言ったのにっ…えっ…」
「済まない、止まらなくて…ルシフェル、泣かないでくれルシフェル…。」
何度も私の名を呼び暖かい手で優しく撫でるイーノックの事を、どこまでも優しいと感じる。無理矢理身体を開かされた筈なのに、どうしてだろう何故か嬉しいと思ってしまう自分が居るのは。

「好きだ、愛してる。貴方を俺のものにしたい。貴方が欲しいんだ。」

苦しそうな表情は、罪の意識か。

「…全部、あげたじゃないか。」
ぽろりと零れた言葉に、イーノックは何を勘違いしたのか目を逸らすと私を抱く腕に力を込める。
ああ馬鹿そうじゃない、本当に話を聞かない。
「身体も、心もお前のものなのに。これ以上何が欲しいんだ。」

だって、こんなの。絶対に逃げられない。