噛み癖が直んないね


「はい、あーん。」

差し出された匙に口を開くことで反応を返すと、それはそのままイーノックの口内へと消えていき彼の舌に幸福な甘みをもたらした。
ルシフェルがその匙を引き抜こうと手を動かすと、かちり、と硬い音がしてその金属はイーノックの歯に引っ掛かる。

「こら、噛むなと言っただろう?」
本当にお前は人の話を聞かない。と言うその表情と口調は、咎めているような内容に対して随分と柔らかで甘い。
ルシフェルは匙を手元に戻すと、再びその先にプリンを乗せてイーノックへと運んだ。

前にアイスを食べさせた時は、木で出来たものを使っていたので歯形が残ってしまっていたが、今回は銀の食器なのでその心配は無い。
自分とイーノック、交互に食べていくてほどなくして器の中のプリンは消え、イーノックは次にルシフェルの指先を口に含んだ。

指から腕に、腕から首筋に、唇はどんどんルシフェルを型通っていく。

「ふふ。だから、噛むなって。」
胸に腰に脚に、赤い歯形と痣を付けながら、ルシフェルの身体を縦横無尽に駆け巡り、愛の証を刻んでいった。
ずっとその赤が消えてしまわないように。