尾行


目前に立ちはだかる敵を次々と倒していくイーノックの姿を、どちらの攻撃も届かないような安全な距離でただ見つめる。
上空から見る彼は舞うように美しく闘い、そして順調に勝ち進んでいた。その一挙一動を見る度に、何とも言えない高揚感が私の全身を支配してぞくぞくと背筋を震わせる。

ただ一人をひたすらに見続けるという行為はまるで恋にも似ていて。
元々彼を気に入っていた私の想いが確かなものに変わるのはあっと言う間だった。

「ルシフェル!」

一段落着いた頃、私の名前を呼びながら嬉しそうに駆け寄ってくる。まるで犬のようだななんて思いながらも、それに応える自分の声も弾んでいるのが分かるから、彼ばかりをどうこう言える立場ではない。

手当ての為に背を向けた彼の、その逞しい肩に祝福を贈る。治療以外の意味も込めているのは、私だけの秘密。

いつまでもお前を見つめていよう。お前の進む道は、私の道でもあるのだから。
お前の全てを、私の全てをもって。