プロ並の溺愛


よく冷えた水を一口飲み込む。
セックスの後の火照った身体にそれはすうっと染み込んで、とろけた頭の芯を冷やしていった。

夜の生活については、現状にかねがね満足している。それはイーノックが上手であると言うのも大いに関係しているだろう。優しい癖に強引で、気持ちが良くて何も考えられなくなる。
時々、恥ずかしかったり悦すぎて苦しかったり焦らしの一環だったりで止めろだの嫌だの言うこともあるが、ぶっちゃけてしまうとイーノックと身体を重ねる事は大好きだ。

けれど、あえて一つ悩みを言うなら。彼はあまり求めてくれない。

初めての時、あまりの快楽に付いて行けず号泣した挙げ句に意識を飛ばした私を気遣っているのだろうが、それが癖になってしまったこちらとしては良いからガンガン襲ってくれと思っているのに、お互いの思惑は中々一致しない。

結局、私の方から誘って押し倒して求めている毎日だ。お陰で最近は、ベッドの中で口走る卑猥な言葉の内容と回数がエスカレートしている気がする。
イーノックがそれで良いのなら幾らでも調教してくれて構わないんだが、何かの拍子にぽっと出の真っ白純情キャラに心を奪われたりしたらどうしようという不安もあり中々難しい。まぁ既にだいぶ慣らされている気もするが。

そんなことをつらつらと考えながらコップを握り締めていると、イーノックは少し擦れた声を上げながら、剥き出しの肩に触れてきた。
「俺にも、水をくれないか。」


その声に少し悪戯心が湧き、コップを渡さずに口移しで水を飲ませると、冷たくなった私の舌をまだ熱いままのイーノックの舌が絡め取る。

「ん…ふ…。」
ちゅ、ちゅと音を立て小さなキスを繰り返した後、唇は私から離れることなく首筋を伝って降りていく。
脇腹に触れる手は探るような動きで私を撫で、濡れた舌が性感を探る。

「済まない…ルシフェル、もう一度。」

そう言って吐く息を胸で受け止め、返事の代わりにつむじに口付けた。
何度だって相手をしてやるさ、時間は幾らでもあるのだから。