苦笑い


「メタトロン様」
「今日と言う今日は」
「我々の話を聞いて頂きます。」
どん、と目前に立つのは三人の天使。少し前からことあるごとに追い回されており、今日、とうとう議会の帰りに捕まった。

彼等が言わんとする事は解っている。

「ルシフェル様の事についてです。」

嗚呼、やっぱり。

可愛い俺の恋人は、俺がまだ生まれてすらいない頃からあっちへフラフラこっちへウロウロ落ち着きが無く、大切な会議をすっぽかしては他の天使達を困らせていたらしい。
本来ならば誰かが注意なりをする所なのだが、彼は一番最初に作られ、神の寵愛を一身に受ける大天使。誰もそんな勇気は無い。

どうにもルシフェルを止められないそんな時、人間だった俺が彼と恋に落ち更にはメタトロンとして昇天した。
今となっては俺の方が立場は上だが、生まれた時から自分達の上司であるルシフェルよりも、元々部下であった俺の方が文句を言いやすいらしい。標的はあっさりと変更され、こうして今に至る訳である。

(まぁ、元はと言えば全部ルシフェルの所為なんだが…)

それでも俺に言われても困る。さてどうやって逃げようかと思案していると、その時、どこからともなく救いの声が聞こえた。


「ルシフェル様ー!」

三人はびくり、と肩を震わせ一斉に振り返る。
それは発見ではなく捜索の声だったようだが、せっかくのその隙を逃す筈も無く、俺は翼を広げて地面を蹴った。

「あっ!」
「メタトロン様まで!」
また何か叫んでいる三人に、苦笑しながら大声で返す。
「申し訳ない、俺も、彼に何かを指図するなんて出来ないんだ。」

まぁその理由は彼等と違って、ルシフェルが可愛いからなんだけど。