冷えた瞳


ルシフェルは可愛い、綺麗だ、美しい、悩ましい、艶めかしい。
どんな言葉を並べても足りない溢れんばかりのその魅力は、今日も俺を悩ませる。あれが天使だなんて、嘘だろう。
いや、俺の天使である事には間違い無いんだが、どちらかと言えば人間を堕落の道へと堕とさせる悪魔にしか見えない。
彼の望みならどんな事だって叶えたいと思うし、彼と居ると自分がいかに欲にまみれた生物であるのかがよく解る。

あの白く滑らかな肌に触れたい、舐めたい、吸い付きたい、噛りたい、あわよくば「堕天しちゃう!」なんて事を言わせるような行為もしたいし啼かせたい。
本当に、彼を見ていると欲望というものが、尽きない。

だが本当にそんな事をしてしまえば、きっと俺だけでなくルシフェルまで神に怒られてしまう。
魂の牢獄に繋がれたルシフェルを見てみたくないと言えば嘘になるが、それはあくまでプレイの一環程度の希望であり本気で彼を堕天させたい訳ではない。

ではどうすれば彼と一つになる事が出来るだろうか。
取り敢えずの問題は神だ。ルシフェルと想いの通じ合っている今、神のお許しさえ頂けるのであればすぐにでも……「…ック。おいイーノック?」

彼の声で現実へと引き戻された。嗚呼、それにしても美しい。

「大丈夫か?鼻から血が出ているぞ、日に当たり過ぎたんじゃあ…。」
そう言われて顔に手を当て、初めて気が付いた。いつものように、大丈夫だ問題無いと言ってから血を拭う。

心配そうに寄った眉もそそるが、あの瞳がぐずぐずに溶けて懇願するのも見てみたい。さぁ、どうやって彼の表情を引き出そう。

考えるだけで、背筋がぞくりとした。きっと今の俺の瞳は冷たく光っているんだろう。
逃がしたりはしないよ、俺だけの愛しい人。