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恋月想歌10


「……最近、村人が次々に殺されてるんです」
 拐われて、殺され、見せしめのように村に打ち捨てられる。死体はある者は無惨に引き裂かれ、ある者は血を全て抜き取られていた。どちらにせよ人間業とは思えない――伝説にある化け物を彷彿とさせるものだった。
「みんな、ヴァンパイアが復活したんだと言っています。私も、信じたくはないのですが……」
 だから、ひたすらに神に祈り救いを求める。ミサに人が多くなってきたのはこのせいだ。
 語りながらもリムは身震いした。自身も不安と恐怖に押し潰されそうなのだ。ちらりとレストを見やれば、以外にも取り乱した様子ひとつなかった。
「……そうなんだ」
 レストは低い声で言うと、すうっと目を細めた。その瞳は不思議な色に輝いている。以前にも見たことがあるような――そう、彼が目を覚ましたときだ。夕日に輝いていたように見えたその色は、紅。
「まさか」
 考えて始めてみれば、全てが疑わしかったのだ。彼のことは名前以外なにもわからない。そしてかつてヴァンパイアが住んでいたとされる、西の森から来たという。
 驚愕を隠せないリムに、紅い目の青年は囁いた。
「お話ありがとう、シスター……しばらくおやすみ」
 リムの意識は、そこで途切れた。


 



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