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桜幻影2





 風が薄紅の花弁を揺らす中、ふと視線を感じたような気がして男は足を止めた。
「どうしたの?」
 傍らの女が、訝しげに首を傾げた。ひとつの傘に入って歩いているので、必然的に彼女も立ち止まる。
「いや……今、女の人が居なかった?ピンクの着物の」
「……誰も居ないよ?」
 彼女はさらに首を捻った。気のせい、だろうか。ビニール傘越しに見た桜を、何かと勘違いしたのかもしれない。
「まぁ、いいか。それより早く行こう。この先が一番綺麗に咲いてるんだ」
「はいはい。まったく、よくこの天気で花見しようなんて思うわよね」
 うんざり、といった様子の相手に、男は微笑んだ。
「まぁそう言うなって。雨の日の花見も乙なもんだよ――」






―――――

以下あとがき。


唐突に桜が書きたくなって思いついた話でした。
着物の女→幽霊、やって来た男→女の待ち人の生まれ変わりって設定でした。一応。



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