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 力なく答えたルアスに反応したのはネルだった。騎士ごっこをして遊ぶこの年頃の少年らしく、彼も剣や鎧といった物への憧れは強いのだろう。
「ルアスばっかりずるいぞ! 俺もやる!」
「却下。お前にやらせたら何壊すか分かったもんじゃねぇからな」
 やんちゃ盛りの悪ガキに剣など持たせては、ルアスとは違った意味で危なっかしい。そう即答すると、案の定ネルは不満の声を上げながらゼキアに詰め寄った。
「はぁ!? どういうことだよゼキアのバカ! ケチ! 昼行灯!」
「ガキにそんなこと言われたくねぇ。つーかそんな言葉どこで覚えてきたんだお前は」
 罵詈雑言と共に手足も出してくるネルに応戦しつつ、ゼキアは今日の予定に思いを巡らせた。
 とりあえず、ルアスの稽古については保留である。護身術なら、剣ではなく別のものを考えた方が良さそうだ。あとは、そろそろ日用品の買い出しに行かなくてはいけない。このまま子供達に付き合っていては、おそらく出掛けそびれてしまうだろう。そこまで考え至り、ゼキアは子守りを自分以外に押し付けることにした。
「よーし、わかった。そんなに剣を習いたかったら、まずルアスと一緒にその辺走ってこい」
「……へ?」
「なんでだよ! 意味わかんねぇし!」
 ルアスが間抜けな声を上げるが、そちらは無視してゼキアは不服そうなネルに応えてやる。
「剣を使うなら、先に体力つけないとな。別に鬼ごっこでもいいぞ」
「……おにごっこ? おにごっこするの?」
 ここに来て、唐突にルピの声が割り込んだ。剣に興味がないらしい彼女はいかにも退屈そうに会話を聞いていたのだが、鬼ごっこと聞いた途端に目を輝かせている。遊びたくて仕方ないと、その様子が物語っていた。
「じゃあ、じゃあ、ルアスがおにね! よーいどん!」
「あ、こらルピ! 待てよ!」
「え、ちょ、ちょっと二人とも待ってよー!」
 口を挟む間もなく駆け出した兄妹に続き、木剣を放り出したルアスが慌ててその後を追う。次第に遠ざかる三人の背中を見つめながら、ゼキアは手を振って声を張り上げた。
「ルアスー! チビ共の面倒は頼んだぞー!」
 何やらルアスが恨み言を叫んでいたような気もするが、聞こえないフリをしておく。彼が付いていればネルとルピも無茶はしないだろう。ゼキアは彼らが街並みの中へ消えていくのを見送ると、地面に転がった木剣を拾い上げた。
「さてと、これ片付けて俺も出掛けるかな」
「どこまでお出掛けかしら?」
 不意打ちのように背後で響いた声に虚を衝かれ、ゼキアは思わず半歩下がりながら振り返った。
 しかし相手の姿を認めると、その緊張は一気に抜け落ちた。一応、見知った顔だったためである。
「……なんだ、お前か」
「ごめんなさい、びっくりした?」
 おどけたように肩を竦めたのは、くすんだ貧民街に不似合いな鮮やかな瑠璃色――ルカである。


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