彼女にしてほしいコスプレ




【レーガ】


「レーガってさ、コスプレに萌えたりするの?」

「コスプレ…コスプレか…。あんまりピンと来ないけど、それがどうかしたのか?」

「ううん、別に。ちょっと聞いてみただけ」

「コスプレって、あれだろ?メイドとか、ナースとか、そういうやつ。」

「まぁ、主流はそのへんだよね。」

「うーん…別にオレはなまえだったらなんでもいいんだけど…それじゃ駄目か?」

「でた殺し文句!!」


おそろしい子!
…なんて、脳内で高笑いをしていたら、「あっ」とレーガが口を開いた。


「…あった。オレ、あれが好きかも。」

「…?」

「彼シャツ。彼シャツがいい。」

「あー…」

「さ、なまえ。着替えようか。」

「えっ、やるなんて一言も言ってないよ!」

「なんだ、そういう振りじゃなかったのか?」

「ちがうよ!聞いてみただけって言ったじゃん!」

「ははっ、心配するなよ。絶対似合うからさ。」

「笑顔でシャツを押し付けないで!ちょっ、変態!」

「呼んだか?」

「開き直ってるよこの人!もうやだ!!」





【クラウス】


「みてみて、クラウスさん!セーラー服です!!」


なまえがくるりと一回転すると、動きに合わせてひらりとスカートが揺れた。


「…っ、ああ。そうだな。」

「えー…なんか、反応薄くありません?」

「そんな事はない。ただ、制服というのがどうも…見慣れなくてな。」

「そっか…まぁ確かに、セーラー服に萌えるクラウスさんとか、犯罪臭しかしないですもんね…」

「…ひとまず聞かなかった事にしておいてやろう。」


「じゃあ、なんのコスプレが好きなんですか?」

「……」(なんでコスプレ限定なんだ…?)

「……答えられないなら、問答無用でセーラー服って事にしちゃいますよ?」

「それはちょっと待て。そうだな…」

「……」

「……」

「…さーん…にーい…いーち……」

「……」

「っはい、時間切れです!」

「なんだ、時間切れがあるのか。しかし、そんなに突然言われてもな…」

「イリスさーん!!クラウスさんはやっぱりセーラー服がいいって!!」

「…っおい、いきなり何を言い出すんだ?だいたい俺が好きなのはセーラー服じゃなくてだな、」

「じゃあ何なんです?」

「……そうだな…、あっ、あれだ。そう、ナース。ナースだ」

「イリスさーん!!やっぱ違うって!ナースがいいって!!」

「だっ、だからその、それは強いて言うならの話であって!」

「いかがわしい!ナース!!」

「頼むからもうその辺にしておいてくれ!!」





【ミステル】


「…うわぁ、なにこれ」

「どうかしましたか、そんな所で立ち尽くして。」

「なんで私のクローゼットに、見覚えのない衣装が増えてるわけ?」

「あぁ、その服ですね。もちろんプレゼントですよ。日頃からの感謝の気持ちを込めて。」

「…それにしては、チョイスに問題があると思うんだけど…」

「何を言うんですか。そんな事はありませんよ。」

「だって…!なんでバニーガール!?」

「バニーガールだけじゃありません。こっちにメイド、巫女さん、婦警さんも揃えているじゃないですか。一体なんの文句があるんです?」

「文句だらけだよ!牧場の仕事しづらい服ばっかじゃん!」

「別に、仕事着にして欲しいとは言っていませんよ。家の中でだけ、着てもらえれば良いんです。…というか、むしろこれらの服で外には出ないで下さい」

「なんか余計に面倒くさい!汎用性低すぎる!!」

「良いじゃないですか。…ボクが、見たいんですから。」

「…っ、しおらしくしても駄目っ!」

「それは残念です。では、まず何からいきましょう。あなたの好みはどれですか?」

「…ミステルなんか嫌い!!」

「嫌い!?」





【ナディ】


「コスプレだよ、コスプレ。何かひとつくらい、これがいい!っていうのあるよね?」

「ないナ。正直、なんでもいい。」

「なんでもいいが一番困るんだけど…。せめて方向性とか、ないかな?」

「…方向性?」

「CAさんとかナースさんみたいな職業系とか、巫女さんとか着物みたいな和服系とか、あとは…制服とか体操服みたいな、学生系…とか?」

「なんというか…よくそんな、ポンポン出て来るよナ。」

「い、今は気にしなくていいのっ!!とにかく、イリスさん命令で何か一つ着なくちゃいけないんだから、せっかくだしナディ選んでよ!」

「なにがせっかくなのカ、よく分からないガ…。ホント、オレはなんでもいいゾ。」

「うぅ……そっか。…まぁ、それならこっちで適当に決めるけど…。」

「オイ、どうして落ち込むんダ?オレは、なまえだったらなんでも似合うと思って言ってるんダガ…」

「え…!」

「マッタク。少しは察してくれ。」

「えっと…嬉しい。ありがと…。」

「ハァ…分かってくれたならいいガ。ソレデ、結局なににするんダ?」

「うん、決めたよ。この際、ナディコスにする。」

「ソウカ、それは良かっ………ハァ!!??」





【フリッツ】


「メイド服!ぜったいメイド服が似合うぜ!それであれやってくれよ、おかえりなさいませご主人様、ってやつ!」

(出来心で聞いた私がバカだった…)

「あ〜、なまえのメイド姿とかぜったい良いにきまってる!ひとめで良いから見てみたいぜ。なぁなぁ、この家にはメイド服ないのか?」

「…あっ、ちょっと!勝手にクローゼット開けないで!!」

「おおっ、あるじゃん!なんでこんなのまで持ってるんだ?」

(がんばってコンプリートしましたから、なんて言えない…!)

「まぁいっか。じゃあまずはこっちの…カチューシャだっけ。これから付けるぜ♪」

「……」

「おっ、似合うじゃん!さすがなまえだなー♪」

「……」

「服も似合うんだろうな〜。…ってどうしたんだ?」

「……」

「もしかしてオレ、調子乗りすぎたか?ごめん、悪かった!だから押さないで!追い出さないでくれよ〜!!」

「お帰りくださいませ」

「それちょっと違う…って、そうじゃなくて!ホントごめんって〜!!」





【カミル】


「…これでどうだ!」

「う〜ん…。ごめん。やっぱりボクはあんまりコスプレにこだわりが無いのかも。」


…悔しい。
カミルの萌えポイントを知りたくて、コスプレにおいて定番と言われるものはほぼ試したのに、こうまでも無反応とは…。世の中、コスプレに全く興味のない男の人も一定数いるのかな。

でも、まだ諦めない。たとえ着替えのしすぎで全身筋肉痛になろうと、カミルの萌えを掴むまでは!

私はもはや意地になって、クローゼットに駆け込み、着ていたネグリジェを脱いでゴスロリに袖を通す。ちなみにこれはクマのぬいぐるみというオプション付きだ。


「…どうかな?」

「そうだなぁ…なんか、可愛いのは分かるんだけど、ちょっと…」

「そっか、これもダメか…。」

「あ…!待って。ぬいぐるみじゃなくて、これを持ってみてくれるかな。」

「…花かご?」

「うん。」

「…どう?」

「……すごく、いい…。」

「えっ!!?カミルが反応した!?」

「うん、好きだな。やっぱりなまえには花が似合うよ。」

「え…そういう事なの?」


彼のツボが分かったのは嬉しい。嬉しいんだけど…なんだかすっごくモヤモヤする。
まさかと思い、私はさっき試したネグリジェに再び着替えた。もちろん、今度は花かごというオプション付きだ。


「どうでしょう…。」

「うん、それもいいね。さらっとした淡い色のネグリジェに、花が散りばめられるみたいな…でも、せっかくだから夜のイメージがある月下美人を持ったら、もっと似合うだろうな。」

(なんか語り出した…!)


「じゃあ、これは?」

「巫女さんか。和風の花で…やっぱり桜かな。ああ、でも菖蒲なんかも良さそう。」

「…うん、分かった。結局のところ、カミルには花なんだね。」

「はは、そうなのかも。なんか、なまえと花って組み合わせが、至高なんだよね。」

「(もう何も言うまい…。)じゃあ、いい加減着替えも疲れたことだし、これでお開きってことで。」

「…え!終わっちゃうの!?」

「!?」

「シスターに百合とか燕尾服にバラとか、合わせてみて欲しい服が色々あるんだけど!」

「いや、もう終わろう!?」




[ END ]


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