小腹が空いたと弥生はコンビニへと赴く。
そしてアイスを食べながら帰路へついていた時だった。


「おっ、弥生がいるアル!私の分のアイスもあるアルか?」


突風と共にやって来た神楽と定春。…と、もう一人。


「フハハハハ!今日のわしはついているようだ。妖刀・星砕、そしてまた新たな得物が手に入るとは!」


現れた天人はギラリと目を光らせ、弥生の腰にある刀を見つめている。そんな天人に弥生は眉間にシワを寄せた。
これは見事に神楽に巻き込まれた、と。


『次から外で会う時は他人のフリしよ…』

「いやアル。そんなコソコソした関係じゃないネ私達」

「おい小娘」

『いや…でもマズイよ。誰が見てるか分からないから』

「誰かって何ヨ。もしかして私の他にも女がいるのね!?」

「わしと…」

『違うって。そうじゃなくて…』

「もうイヤ!私、もうアナタの何を信じていいのか分からないわ!!」

「わしの話を聞けェェェ!!」


視界に入れないようにしていたが怒鳴られてしまっては目を向けざるをえない。


「何寸劇始めてんだァァァ!!しかも展開良くねェし!!」

『なんなの…』

「知らないアル。いきなり襲ってきたヨ」


弁慶のような格好をしたヒゲ面の天人。手には槍、背には多くの刀を入れた篭を背負っている。


「小娘」

『神楽、呼んでる』

「いやお前だよ」


自分だった事に弥生はますますシワを寄せる。


「その腰の得物を賭けてわしと勝負せい」

『非常にめんどくさいんでいやです』

「ならば刀を置いていけ。それならよかろう」

『ムリ。これ私にゾッコンだから。離れてくれないから』

「ならば勝負しかあるまい。ゆくぞ」

『うぜー…引いてくれないんだけど…』

「じゃ、ずらかるアルか?」


二人は顔を見合わせる。刹那、弥生は定春にまたがり神楽と一緒に天人から逃げ出す。
待てと叫びながら追ってくるが待つ訳がない。


『ね、何でぎんの木刀持ってんの…』

「お金欲しいネ。ショッピングは女に必須アル」


でも誰も買い取ってくれなかったヨ。と、神楽は溜息をつく。
どうやら銀時の木刀を金に代えたかったらしい。
神楽の気持ちも分からなくはない。
極たまにしか仕事の入らない万事屋では給料らしい給料などないのだから。
それにしてもしつこい。
後ろを一瞥したがまだあの天人が追ってきている。


『…どーする?』

「私に任せるネ」


階段をいっきに駆け上がり、建物の中を駆け回る。
天人の姿が見えない事を確認すると神楽はある一室に弥生と定春を残し、窓から上へと向かっていった。
気になるのか、定春は窓から首を出し上を見ている。
そんな定春を残して弥生もまた、部屋から出て行った。





























通路には砕けたスイカ、半壊した手摺り、そして神楽の姿。
弥生に気付くと笑みを浮かべて駆け寄ってくる。


『無事?』

「当たり前ヨ!私を誰だと思ってるアル!かぶき町の女王神楽アルヨ!」


どん、と胸を叩いてみせる神楽に弥生は微笑する。頭に手を置き、撫でてやれば腰へ抱き着いてきた。


「私、今回で奴より大人になったアル」

『……そう』


神楽の言ってる意味が分からない弥生だった。









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