幽霊を信じている訳ではないが、真選組の局長である近藤までが倒れてしまっては嫌でも幽霊という存在が浮上してしまう。
得体の知れないもの。そう土方は言葉を濁すが


「…やっぱり幽霊ですか」

「あ〜?俺ァなァ、幽霊なんて非科学的なモンは断固信じねェ。ムー大陸はあると信じてるがな
アホらし、つき合いきれねーや。オイ、てめーら帰るぞ」

『うっす』

「銀さん…

なんですかコレ?」


新八の言うコレとは銀時の両手に握られた新八と神楽の手。それはもうしっかりと握られている。


「なんだコラ、てめーらが恐いだろーと思って気ィつかってやってんだろーが」

「銀ちゃん手ェ汗ばんでて気持ち悪いアル」

『………ぎん、確か…』

「え、なに弥生、手ェ繋ぎたいって?ったく仕方ねーなァどいつもこいつも恐がりで…」

『言ってない…触りたくない…』

「触りたくないって何だオイ。そんなあからさまに逃げなくてもいいだろーが」

『…だって鼻ほじった手ぷらす汗ばんだ手なんていや…』

「この手のどこが汗ばんでんだよ。分かるから、握れば汗ばんでないって分かるから。手ェ出せ。一瞬だけだから」

『気持ち悪い、ぎん』

「なんだよ人がせっかく…」

「あっ、赤い着物の女!!」


沖田の言葉に銀時は押し入れへと突っ込む。


「…何やってんスか銀さん?」

「いや、あの、ムー大陸の入口が…」


これは完全にビビっている。沖田も確信めいた言葉をもらすが強がりを見せる銀時。


「土方さんコイツは…アレ?」


向かいにいたはずの上司へ視線を移すがその姿はなく、何故かツボへ頭を突っ込んでいる彼の姿が。


「土方さん、何をやってるんですかィ」

「いや、あの、マヨネーズ王国の入口が…」


二人へ冷めた眼差しを送る四人。幽霊なんて信じないと豪語していた人物がその存在に一番怯えているとは。


「待て待て待て!違う、コイツはそうかもしれんが俺は違うぞ」

「びびってんのはオメーだろ!俺はお前、ただ胎内回帰願望があるだけだ!!」

「わかったわかった。ムー大陸でもマヨネーズ王国でもどこでも行けよクソが」

「「なんだそのさげすんだ目はァァ!!」」


ふと、神楽はある場所へ目をとめる。そこへ沖田と新八、そして弥生も目を向ける。


「なんだオイ」

「驚かそうったってムダだぜ。同じ手は食うかよ」


そう言うも四人の表情は変わらない。目を見開き、自分達の後ろへと視線を向け続けている。そしてついには声を上げて部屋から逃げ出した。
四人は見たのだ。二人の後ろにある襖の間から逆さにぶら下がった赤い着物の女を。
銀時と土方もその存在に気付いたのか、屯所内に悲鳴が響き渡った。


「みっみっみっ見ちゃった!ホントにいた!ホントにいた!」

『ぎん、終わった…?』

「銀ちゃああん!!」

「奴らのことは忘れろィもうダメだ」


あの叫び声から誰もがそう思った。だが二人は切り抜けてきた。
必死に自分達を追いかけてくるが、その背にはあの女をしょっている。
つまり逃走はまだ終わっていない。


「ふざけんじゃねェェェ!!追ってくんなァァァ!!」

『いつまで走んの…』

「え!?そりゃあの二人から逃げ切るまでだよっ!!」

『疲れた…』

「そこの廊下を曲がった所に倉庫がありまさァ。一先ずそこへ隠れやすぜ」


言われたとおり、四人は倉庫へ身を潜める。
再度聞こえてきた二人の悲鳴に今度こそやられたと新八は頭を抱える。


「しめたぜ。これで副長の座は俺のもんだィ」

「言ってる場合か!」

「オイ、誰か明かり持ってねーかィ?あっ!蚊とり線香あった」

「なんだよアレ〜なんであんなんいんだよ〜」

「新八、銀ちゃん死んじゃったアルか?ねェ死んじゃったアルか?」

『夜…夜なのに寝てない…そういえば昼からも…』


暗い倉庫の中、それぞれに思うことを口にする四人。
誰がどう見てもホラーにしか見えない相手。もしあの女が幽霊ならば成す術はない。


「実は前に土方さんを亡き者にするため外法で妖魔を呼び出そうとしたことがあったんでィ。ありゃあもしかしたらそん時の…」

「アンタどれだけ腹の中まっ黒なんですか!?」


元凶は沖田だと神楽は銀時の敵討ちを始め二人は喧嘩になる。
巻き込まれないよう、弥生は隅へと避難しそのまま睡魔に任せて夢へと旅立とうとした時だった。


「ぎゃああああああああああ
でっ…でっでで出すぺらァどォォォ!スンマッセンとりあえずスンマッセンマジスンマッセン!てめーらも謝れバカヤロー!人間心から頭さげればどんな奴にも心通じんだよバカヤロー!!」


いきなり謝り出した新八。両脇にいた神楽と沖田の頭を無理矢理下げさせる程の謝罪ぶりだ。


『…どしたの』

「え、いや…さっきあの女の人がいたんだけどいつの間にかいなくなってて…何でだろ?」


不意に新八は沖田の手にある蚊取り線香へ視線を落とす。


「……もしかして、」


呟くと新八は一人倉庫から出て行った。
ぼんやりとその姿を見送った後、限界だったのか崩れるようにして弥生はその場で眠るのだった。




















翌日、幽霊の正体は蚊の天人だったことが明らかとなった。
腹に子供がいるらしく、出産するエネルギーを蓄える為、真選組の男達の血を吸っていたのだと言う。


「でも一段落して良かったよね。一時はどうなることかと思ったけど」

『そうだね…』

「新八ー弥生ービビリはほっといて先帰るアルー」

『うぃ』

「ちょっと待てェェ!!誰がビビリだ神楽ァァ!!」









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