首から下は普通の巫女装束。だが首から上は貞子。
相対な格好をしているのは弥生だ。ついでにいうと銀時も新八も神楽も誰だか分からないような格好をしている。
今日も仕事も金もない万事屋。雑談で時間を潰していると、ふと上がった一つの話題。


「夏になるとよく心霊とかお化けとかって話題が出ますよね」

「んだよ新八ィ、お前もありもしねー話を信じてるクチか」

「別に信じてるワケじゃないですけど…」

「大体お化けって本当にいるアルカ?会ったことないヨ。私会ってみたいアル!」

「あった事ある奴はてめーの脳内で勝手に妄想繰り広げて勝手にビビって勝手に失禁してんだよ。新八みてーに」

「僕で例えるのやめてくれませんか」

「しっかし仕事ねェなァ〜この際お化けでも何でもいいから依頼してこいよ」

「私お化け退治したいアル!」

「おっ、いいんじゃねーの。新八みてーにビビリがいるかもしれねェしな」

「ビビリじゃないです。でもいいですね、時期的にも」

「よし、じゃあまず格好から入ってみるか」


ということで不審極まりない格好で街中を歩き回る万事屋ならぬ拝み屋一行。
ただでさえ怪しさ故に人が寄ってこない上、弥生の姿を見た人々は皆、凄まじい速さで遠退いて行ってしまう。


「お化け退治依頼されるどころか避けられてるんですけど、皆目合わせてくれないんですけど」

『じゃ、帰ろう』

「お前そうやってスグ帰りたがるのやめなさい。例えアウェーな場所だろうと逃げずに戦うのが大人になるっつー事なんだよ。そうやって人は強くなってくんだよ」

『先帰ってるね…』

「待て待て待て待て。お前少しは銀さんの話聞いて。俺間違った事言ってねーよな?真面目だよな?俺」

「銀ちゃん説得力ないネ。マダオの見本に言われても何とも思わないアル」

「あの〜〜スイマセン」


神楽の言葉に沈む銀時へ声をかけたのは山崎だった。初めて会う人との対応を見せることからどうやら銀時達だとは分かっていないようだ。
意外にも、霊感皆無の集まりに依頼を申し込んだのは山崎が所属する真選組からだった。
屯所内では今、幽霊のせいで多くの隊士が寝込んでいるとのこと。
山崎の案内のもと、訪れた真選組屯所では近藤をはじめ土方、沖田が出迎える。


「何だコイツらは…サーカスでもやるのか?」

「いや、霊をはらってもらおうと思ってな」

「オイオイ冗談だろ。こんなうさん臭い連中…
むしろアイツ等がはらってもらった方がいいんじゃねーの?憑いてんぞ貞子が」

「彼女も拝み屋の一人だそうです」

「祟り屋の間違いじゃなくてか」


一人土方は疑いつつも、うさん臭い拝み屋に屯所内を見せて回る。
強力な霊の波動を感じるだの工場長の霊だの適当ながらもなんとか繋げてみたが、チームワークの悪さに喧嘩となり、その拍子で正体がばれてしまい、今四人は逆さまに吊り上げられている。


『ね、帰ろ…』

「中途半端に目ェ開いてねェでちゃんと見ろ現実を。この状況でどう帰ろってんだオイ」

「弥生ちゃん、まず帰れる前に生き残れるかが問題だから」

「そうでさァ、生かすも殺すもこの話が真選組中心になるかも俺次第でィ」

『布団に入ってから永眠させて下さい他は譲ります』

「どんな願望だてめェェェ!!おめーはいいかもしれねーが俺達のこともちったァ考えろコノヤロー!!いいのか俺達の出番がなくなっても!!勝手に譲るなァァァ!!」

「銀ちゃん、怒鳴ると頭パーンなるヨ」

「ったくギャーギャーよく喚く連中だな」

「あ?」


呆れた眼差しを向けながらも自分達を吊り上げた土方本人が縄を解いてくれた。
暫く頭と足を逆にされていたからか、解放された四人は地面につっ伏す。


「本来ならてめーらみんな叩き斬ってやるとこだが、生憎てめーらみてーのに関わってる程今ァ俺達も暇じゃねーんだ。消えろや」

「あー幽霊恐くてもう何も手につかねーってか」

「かわいそーアルな。トイレ一緒についてってあげようか?」

「武士を愚弄するかァァ!!トイレの前までお願いしますチャイナさん」

「お願いするんかいィィ!」


屯所の中へ入っていく近藤と神楽の後ろ姿を見つめながら弥生は欠伸を零した。
聞こえてくる会話は幽霊についてだ。
基本、弥生は幽霊等は信じていない。今まで生きてきた中で出会った事がなければ見た事もないからだ。
といっても、弥生には信じる信じない以前に至極どーでもいいことなのだが。


「赤い着物の女か…確かそんな怪談ありましたね」

「!」

「僕が通ってた寺子屋でね、一時そんな怪談が流行ってたんですよ。

えーっとなんだっけな、夕暮れ刻にね授業終わった生徒が寺子屋で遊んでるとね

もう誰もいないはずの校舎に…


赤い着物きた女がいるんだって


それで何してんだって聞くとね…」

「ぎゃあああああああああああああ!!」


新八の話を遮った近藤の悲鳴。
厠へ駆け付け、閉まっている扉を土方が蹴り破ると顔面を便器に突っ込まれた哀れな姿をした近藤がいて。


「なんでそーなるの?」








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