「夏っていやァ海だなガキ共」

「それが何なんですかァー…」

「銀ちゃあ〜ん…なんでこの家クーラーないネ。
蒸し死にそうアル…弥生なんて返事のないただの屍のようアル…」

『………』

「だから海行こうっつってんじゃねーか。せっかく太陽が有休もとらずに頑張ってんだ。家に引きこもってんじゃねェぞ。特に弥生」

『………』

「海っつってもお金ないじゃないですか…交通費あるかどうかもあやしいんスよ。そんぐらいヤバイんスよ」

「だから海行こうっつってんじゃねーか」

「それさっき聞きました」


銀時が海海と騒ぐには理由があった。
近頃海には謎の宇宙生物が出現するらしく、その宇宙生物には懸賞金がかかっているのだと言う。
金もなく仕事もない万事屋と長谷川は早速海へとやって来たが


「は?えいりあん退治?え?ホントに来たの?あーそォ、アッハッハッいや〜〜助かるよ〜〜
夏場はかき入れ時だってのにさァあの化け物のせいで客全然入らなくてまいってたのよ〜〜」


海の家〔ビーチの侍〕の看板の下、一人焼きそばをいためるおじさん。このおじさんが懸賞金をかけたらしい。


「いや〜〜でもホント来てくれるとは思わなかったよ。おじさんもさ〜〜酒の席でふざけ半分で発言したことだけにまさかホントに来てくれるとは…」


次の瞬間、銀時はおじさんの顔面を鉄板へ押し付ける。


「ぎゃあああああああああ!!」

「酒の席でふざけ半分?おじさーんこっちは生活かかってるから真剣なんだよ。男は冗談いう時も命がけ、自分の言葉に責任もってもらおう」

「待ってェェ!!おちついてェ!!大丈夫!金ならちゃんとはらうから!ちゃんと用意してるから」

「ウソつくんじゃねーヨ。こんなもっさりした焼きそばしか焼けない奴金もってるわけないネ。どーせお前の人生ももっさりしてたんだろ。ほら言ってみろヨ、モッサリって!はい、モッサリ〜〜!」

「ちょっとオオ、何売り物勝手に食べてんのオオ!!」

『おじさーん、焼きそばじゃなくてかき氷…支払いは宝払いで』

「おじさんマキノさんじゃないからそれは無理かな〜〜」

『器のちっせぇジジイが。マキノさん見習え』

「「「「え」」」」


ザッザッと大股で歩いていく弥生の姿を呆然と見送る四人に銀時はいつもの調子で言う。


「この暑さで寝不足なんだよあいつ」

























耳に入る波音は心地良くとも、風が運ぶ熱と厳しい日差しに弥生は顔を歪めた。
眠いのに眠れない。いついかなる時も睡眠にありつけていたというのにこの季節が恨めしい。


『暑い…めんどくさい…何でここにいるんだろ…もうやだ帰りたい…眠い…寝たい…でも暑い…』

「弥生ー!!大変アル!銀ちゃんと新八がっ」

『暑い…やだ…やだよー…』

「私もいやネ!!あの二人がいないと帰り道分からないアルヨ!」

『そうだね』


唸る弥生だが神楽の言葉に起き上がると現場へ向かう。すると見たこともない生物が海に出現している。
おそらくこれが原因の宇宙生物だろう。


『…賞金でクーラー買いたい』

「それ賛成ネ!地獄がいっきに天国アル!」

「ちょっと待てェェェ!!」


二人を止めたのは長谷川だった。そして彼が指差す先は宇宙生物の背にいる銀時と新八。
どうやらこの生物に危険はなく、ただ純粋に遊んでほしかったようだ。

数日後、その生物によって海水浴は大人気との新聞記事を暑さにうなだれながら眺める弥生だった。










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