逃げ惑う人々の波に逆らって弥生は広場へと駆けていた。 突如爆発が起こったのだ。場所は源外がカラクリ芸を披露していた広場からだった。 肩や腕がぶつかり倒れそうになるもなんとかふんばり、人混みをかきわけた先は多くのカラクリと応戦する真選組の姿があった。そのカラクリ達は源外が造ったものばかりだ。
「!!なっ、弥生ちゃん!?なんでいるのこんなとこに!!」
乱闘の中を駆けて行く弥生に近藤は目を見開く。
「ッ、オイ!!」
丁度真横を通り過ぎようとした弥生の腕を掴めば、眉間にシワを寄せ振りほどこうとする彼女。
「テメー死ににきたのか!!こんなとこにくんじゃ…」
『後ろ…』
弥生が指差した方を見れば砲門をこちらへむけるカラクリが。
「チィ!!あ、おい!」
カラクリに気を取られ、弥生から手を放してしまった土方。そのすきに弥生は土方から離れると地面を蹴り、カラクリの上を飛んでいった。
「うお!弥生ちゃんすげーな!」
「何なんだあいつは…猿か」
眼前に広がる光景は三郎というカラクリの砲門を真選組へ向けるよう指示する源外と、説得をしようとする新八の二人。 乱れた息を整えると弥生は砲門の前へと立つ。
「!弥生ちゃん…」
「…どけ。嬢ちゃんも巻き添えくうぞ」
源外がそう言うも弥生はどかない。相変わらず眠そうな顔で見つめている。
「おい…」
『…昔、』
「?」
源外の言葉を遮り、口を開く弥生。
『カラクリを造ってた人がいた。造ってるものは砲とか銃しか見たことがなかったけど、カラクリは本来人殺しの為にあるものじゃないって言ってた。人の役…殺す為じゃなくて、違う方法で役に立つためにあるものだって、 三郎が言ってた…』
「!!」
三郎。その名前に源外はひどく驚いた。 弥生の前では、三郎という名を口にしたことはなかったはずなのに。
「嬢ちゃん、おめェ…」
「オウオウ、随分と物騒な見せもんやってんじゃねーか。ヒーローショーか何かか?」
弥生の肩に手を乗せた人物は銀時だ。 そのまま自分の後ろへと弥生を下げる。
「俺にヒーロー役やらせてくれよ」
「てめーじゃ役不足だ。どけ」
「しょうもねー脚本書きやがって役者にケチつけれた義理かテメー。今時敵討ちなんざはやらねーんだよ。三郎が泣くぜ」
「どっちの三郎だ」
「どっちもさ。こんなこたァ誰も望んじゃいねー。アンタが一番わかってんじゃねーのか?」
「……わかってるさ。だがもう苦しくて仕方ねーんだよ。息子あんな目にあわせて、老いぼれ一人のうのうと生き残ってることが。戻らねーモンばかりながめて生きていくのは、もう疲れた 将軍のクビなんざホントはどーでもいいんだ。死んだ奴のためにしてやれることなんざ何もねェのも百も承知… 俺ァただ自分の筋通して死にてーだけさ だからどけ、邪魔するならお前でも容赦しねェ」
「どかねェ 俺にも通さなきゃならねー筋ってモンがある」
しばらく双方は見つめた後、源外の掛け声と共に銀時は動いた。だが三郎は向けていた砲筒を源外の指示に従わず、静かにおろした。
「「!!」」
振り切った木刀は三郎の左肩を砕く。地に伏せる三郎に駆け寄り、源外は声を荒げた。
「三郎ォ!!バカヤロー!!なんでオメー撃たなかっ…」
《………オ…親父…》
「!!」
《油マミレ…ナッテ楽シソーニ…カラクリ…テルアンタ…好キダッタ… マルデ…ガキガ泥ダラケ…ハシャイ…デルヨウナ…アンタノ姿…》
その言葉は、今は亡き息子が戦場に行く前、最期に残していった台詞だった。
「…なんだってんだよ、どいつもこいつもどうしろってんだ!?一体俺にどーやって生きてけっていうんだよ!」
「さーな。 長生きすりゃいいんじゃねーのか…」
うなだれる源外を背に歩き出す銀時。その後ろを新八と弥生はついていくが、ふと弥生は足を止めた。
『花火、とてもキレイだった…』
そう残すと再び源外に背を向け、去っていった。
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