「弥生!わしと一緒に宙に行くぜよ!」
『いや』
「アッハッハッハ、安心せい!あと10年は手ェ出さんからの〜」
『いかない』
「…弥生、わしゃおんしにこんな所にいてほしくないんじゃ。 おんしゃまだ幼い、それに女じゃなかが?」
『戦に女が出ちゃダメ?幼かったらダメなの?』
「弥生!!わしゃ、」
『ごめん…』
「!」
『もう…戻れない。引くことなんて出来ない』
「………」
『…ありがとう。辰馬は辰馬のやりたいようにやっていけばいいよ』
バシャ。顔面に冷たい衝撃が走った。 酸素ではないものを吸い込んだことでそれを出そうと咳込む。 顔から胸元にかけてびっしょりだ。
「寝覚めはどーですかい、おじょーさん」
『さいあく…』
痛む鼻に手を当てていると上からタオルがふってくると共に眼前はコップ一杯の水。
『…なに』
「飲んどけ。このクソ暑い中よく寝てたからな、流石惰眠姫」
『そうかい』
「弥生ーーー!!!ずっと寝てたから死んだ思ってたアルーーー!!」
口をつけようとした時、腰に勢いよく巻き付いてきた神楽のお陰で水は床へと散らばってしまった。
『あつ…』
「こっちも見てて暑苦しいから離れろ神楽」
「なっ、なな何だアレェェ!!」
『……ここどこ』
「化け物だァァ!!」
「ババアの肌の星」
「ギャアアアア」
『いつ帰れんの…』
「助けてェェ!」
「今から地球に向かうのは間違いねーよ」
ゴゴゴゴゴ
『「!』」
突然の地鳴りがしたかと思えば砂の中から巨大な生物が出現する。それから伸びている触手は船に巻き付き、砂の中へ引きずりこもうとしている。
『何事』
「今更だなオイ」
新八のもとへ向かうと一人、触手に捕われている男がいた。 その男は定春に咬みつかれていた男。彼は自分に構わず大砲を撃てと叫んでいる。 「でも坂本さん!!」
『…(坂本…)』
「大砲うてェェェ!!」
躊躇することなく女、陸奥は大砲の用意を命じた。
大義を失うな。
それは自分達の上司、坂本辰馬の口癖だと言う。彼の生き方に反するマネはしたくないと大砲を放ってはいるが、アレではいつ死んでもおかしくない。現に砂の中へと引きずりこまれている。 なんとか砂蟲が地中に逃げる前に助けようと仲間達は大砲を向けるが一人の男に阻まれた。
「こんなモンぶちこむからビビって潜っちまったんだろーが。やっこさんが寝てたのを起こしたのは俺達だぜ 大義を通す前に、マナーを通せマナーを」
『あ』
「銀さん!」
「辰馬ァ、てめー星をすくうとかデケー事吐いてたくせにこれで終わりか!? 昔からテメーは口だけだ…俺を見ろ俺を 自分が思った通り生きてっぞォォ!!」
言うと下へ落ちていく銀時。 様子はというと触手が砂煙をおこすせいで見えない。 緊張の中、砂蟲が去った地上では傷一つない二人の姿に歓喜がおこった。 座り込んでいる二人のもとへ弥生は歩み寄る。そしてある男の前に止まると一心不乱に見つめた。 「?なんじゃー……」
「何やってんだオメー」
くる、と首が銀時の方へ回る。見つめていた男を指差し、微かに首をかしげる。
『辰馬…?』
「その毛玉スタイルはそうだろうよ」
「アッハッハッハ!そーゆーおんしも昔と変わらずくるっくるぜよ! そーは思わんか?弥生」
『おお…』
「久しぶりじゃの〜わしが思っとった通り美人になっちょるき あれから10年経ったかの〜?手、出してい?」
もじゃもじゃとした頭には銀時の踵が落とされた。 気絶した辰馬の周りに仲間が寄る中、バカはほっといて戻るぞ。と銀時は弥生の手を引く。 旅行も極たまにはいいもんだと思う弥生だった。
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