『旅行?やだ…家にいたい。地球離れるとか考えらんない。宇宙で遭難したらどーすんの…眠い、おやすみ』
と、確かに意思を伝えたはずだが目が覚めれば此処は機内。 どーいうことだと弥生は銀時を睨めば彼は苦笑を見せた。
「だってよォ、せっかく神楽が福引き当てたんだぜ?こんな機会めったにねーんだからよ。ホラ、お前の相棒も持ってきてやったんだしぃ〜」
『………』
乱雑に相棒の枕を引ったくられたことから弥生の不機嫌さが伺える。 枕を抱えてシートに座り、外を眺める弥生の眉間にはシワが寄っている。
「どーするかねオイ。弥生キレてんだけど、誰かメロンパン持ってこい」
「メロンパンで機嫌直るんですか」
「銀ちゃん、メロンパンじゃなくても普段食えないご馳走いっぱいネ。きっと弥生、食べれば直るアル」
「オメーと一緒にすんじゃねーよ。つーワケでメロンパンだ」
「もうどっちも一緒だろ。なんで食い物で機嫌直そうとしてんだよ」
「分かってねーなぱっつぁん。アレは空腹からくるもんだよ。腹減りすぎてイライラが絶頂なんだよ」
「お腹が満たされれば弥生ぐっすり寝るアル。弥生!このご飯美味しいネ!エビとか色々入ってるアルヨ!」
「分かってねーのはお前らだろ!あんたらが寝てる所を無理矢理連れてきたのが原因だァァァ!!」
「うるせェェェてめーら!!今の状況分かってんのかァ!!?」
銃口を四人に向け怒鳴る覆面の男。今の状況とはハイジャックのことだ。
「今ここで殺されてーのか!!?あァ!!?」
『…っ…なぁ…』
「あ。ヤバい」
銀時が言うと同時に銃を持つ男の顔には足がめり込み、床へと倒れた。 のびた男の腹に足を乗せ、刀を握るは瞳孔開いた弥生。
『うるせーのはてめーだよマスクヤロー。何なの?殺されたいの?ならその首と胴体斬り離してやんよ』
「ちょ、ちょ、ちょ!!!弥生ちゃん落ち着いて!!」
「やめろ新八。あーなったら止めらんねェから」
「いやいやいや!!止めないとあの人ホントに首と胴体離れちゃいますよ!?」
「お前らァァァ!!」
再び男の仲間が銃を向けてくるが撃つ前に全て蹴り飛ばし、機内にいたハイジャックは皆倒れた。 ブラボー!!と拍手を送る乗客にポーズを決めて返事を返そうとした時だった。
「ふざけやがって、死ねェェ!!」
もう一人いたらしく、不意をつかれたことで誰一人動けずにいたが、男の背後にあった扉が勢いよく開いたことで必然的にぶつかった男はそのまま気絶し、運良く助かった。
「あ〜気持ち悪いの〜 酔い止めば飲んでくるの忘れたきーアッハッハッハ」
その扉から出てきたのは頭を定春に咬みつかれているサングラスの男。 茫然と見てくる乗客に男は状況が把握出来ておらず、とぼけている。 そんな男を神楽は蹴り飛ばした。定春返せと。 一人と一匹は感動の再会に心和ませていたがそれも束の間、操舵室で爆発が起き、操縦士達全員負傷。最悪な事態に機内は騒然となり、銀時は神楽が蹴り飛ばした男を連れて操舵室へと向かった。
『定春』
パニック状態の中、弥生は定春を呼ぶと「伏せ」を命じ、その上に寝転ぶ。
「…弥生ちゃん、安易に想像つくけど何してんのこんな時に」
『私、死ぬ時は布団の上って決めてるから。でもここ布団ないから…定春をかわりに』
「諦めないでェェェ!!まだ死ぬって決まったワケじゃないから!!」
『永眠…素敵じゃないか』
「もうダメだコイツ!永眠する気満々だよ!」
『皆念仏唱えてくれてるし、安心して逝けるよ』
「安心できるかァァ!!」
「大丈夫ネ弥生!きっと銀ちゃんが何とかしてくれるアル!定春とそこで待っててヨー!!」
「あっ、神楽ちゃん待って!」
二人が去って暫くした後、激しく機内が揺れ動いたが熟睡している弥生には関係ないことであった。
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