今度は以前、捜索願いで受けた娘からの依頼。
外見からして信じがたいが彼氏がいるらしい。その彼氏が今、ヤバイ事になっているのだと言う。


「んじゃ、ちょっくら行ってくらあ」


腰に縄を巻き付けると、天人に囲まれ絶体絶命でいる男のもとへ銀時は降り立つ。コンテナの上から見守っていると心配なのか、依頼人の公子は銀時を下敷きに彼氏のもとへ駆け付ける。


『ぎん潰れた?』

「大丈夫ネ。多分」

「つーかハム子さん、本当にいたんだね…彼氏」

「彼氏の方は牛みたいアルな」

『違うよ…牛とハムじゃ釣り合わない』

「じゃあ同じ豚アル。あれがホントのハム男ネ」

「ホントて何だよ。ハム男に本物も偽物もいんのかよ」

「オイ作戦変更だ。連中を残して戦線離脱するぞ!」


下からかかった銀時の声に三人は縄を引く。と、急に重くなったと思えば銀時の足に公子とその彼氏がしがみついている。


「はっ…腹がしめつけられ…ぐふっ
やばいってコレ!出るって!なんか内蔵的なものが出るって!!」

「内蔵的なもの?いやだヨそんな銀ちゃん!四六時中そんなの出てたら気を使うヨ!!関係ギクシャクしてしまうヨ!」

「出るわけねーだろそんなもん!」


新八が言うも神楽は二人に縄を任せると銀時のもとへ降りる。足にしがみついている公子を落とす為に向かったがかえって銀時に負担がかかる結果となっている。


「っていうかテメーも降り…あ゙っ!!
出たァァ!!ケツからなんか出たぞコレ!新八ィ!!見てくれコレなんか出てない?俺?」

「知るかっつーの!」

「弥生ー!!弥生でもいいからコレ見てくれよぜってぇ何か出てっから!!」

『もう私に近づかないで…』

「アレ、なんで俺拒絶されたの?何おとーさんが娘に洗濯物一緒にしないで!みたいな事言われた感じのショック受けてんの?つーか俺お父さん?」

「アンタ今大変な事になってんじゃねーのかよ!!ぐっ…弥生ちゃん、もっと引っ張れない!?」

『持ってる』

「持ってるだけじゃ意味ねーんだよォォ!!あぁダメだァァ!!」


一人では耐えられず、縄は新八の手を抜け、銀時達は再び敵の中へと落ちた。


「ヤバ…助けに行かなきゃ…!」

『…大丈夫だよ、新八』

「え…」


自分も降りようと身を乗り出す新八の肩を掴む弥生。
下では力ずくで道を開いていく銀時と神楽。
確かにあの二人がいれば大丈夫そうだが


『わざわざ敵地に赴くことない…めんどくさい』

「そっちが本音か」


傍観を決め込む弥生に新八は溜息をついた。
暫く並んで様子を見る。すると彼氏の胡散臭いアフロの中、頭には麻薬がしっかりと張り付いていた。道理で男一人始末する割には敵が多過ぎる訳だ。


「え、どーゆーこと?何であの人転生郷持ってんの?」

『…さあ』


世の中結局金。彼女が人質に捕われたにも関わらず、自分の命優先で逃げた彼氏は公子にそう言い捨てた。そんな男を逃がすべく、投げた銀時の木刀は頭へと命中する。


「人間食い物にする天人…
それに甘んじ尻尾ふって奴らの残飯にがっつく人間ども…
ブタはテメーらの方だよ。薄汚ねーブタ守るなんて俺は御免だぜ」


男の頭に貼り付いていた転生郷を手で弄ぶ。敵なのか味方なのか、そう問われればどちらでもないと銀時は返す。


「それよりホラ、コレ。こいつとそのブサイク交換しよーぜ」

「……お前から渡せ」

「なーにびびってんだか」

「あ゙!!」


新八に目配せをするとこちらへ向けて転生郷が投げられる。
おもむろに新八は立ち上がると木刀を構え、それを真っ二つに斬り裂いた。
天人が散らばった転生郷に夢中になっているスキに弥生は公子を連れ、一行はその場を去るのだった。















「マジありえないんですけど
太助助けてくれって言ったのに何でこんなことになるわけ〜?」

『…ギャグ?』

「ちげーよ」

「ありえねーのはお前だろ。どーすんだソレ」


ソレとは公子がおぶっている彼氏だ。


「言っとくけど、それは焼いても食べられませんよ」

「お前ら最後までそれか」

「コイツ逃すと彼氏なんて一生できなさそーだからか?
世の中には奇跡ってのがあるんだぜ」

「そんな哀れみにみちた奇跡はいらねー
こんなヤツに付き合えるの、私くらいしかいないでしょ…」


そう残すと公子は銀時達に背を向け帰っていく。その後ろ姿に銀時は口を開く。


「何なんだありゃあ」

「恋人というより親子みたいですね」

「あんな母親、俺ならグレるね」










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