テレビ、新聞、週刊誌を飾る話題はアイドル同士の色恋沙汰。ここ、万事屋のテレビにもその中心人物である寺門通が記者の質問攻めに応対している映像が流れている。 何の感想もなく眺める弥生の隣ではドラマの再放送を見逃し、嘆く銀時が。
「弥生〜俺ァどーしたらいいんだ」
『どーもしなくていいんじゃない…』
「全力で考えてくれよオメー!!ピン子に会いてェんだよこのままサヨナラはないんじゃねーの!!?」
『…なんも思いつかないめんどくさい生きてれば会えるよいつか』
「まァそうだな。また再放送するまで待つわ、待ち続けるわ、俺。つーか間のめんどくさいってなんだお前、何も思いつかないんじゃなくて考えないだけでしょーよ、キミ」
『………』
「オイオイ何で黙るの何疲れ切った顔してんのよ」
「銀ちゃん。弥生さっきの一言で気力使いすぎたアルヨ。ヒットポイントが1アル。そっとしといたげて」
「オメーどんだけ弱ェーんだよ!!瀕死寸前じゃねーか!!お前の回復アイテムはなんだ、メロンパンか」
銀時が言い終わると同時にポスリと倒れる。
「0になったネ」
「なんでだーー!!!」
「それより新八の様子がおかしいアルヨ。ず〜っと日めくりカレンダーめくり続けてるネ」
ヒラヒラと紙の山が新八の足を埋めていく。 お通の熱狂的ファンの彼には衝撃的すぎる報道だったのだろう。現実逃避真っ只中。 そんな新八に銀時は戒めの言葉を投げ掛けるが彼も新八の仲間入りをはたす。テレビが告げた結野アナ結婚、を聞いて。 ふと、万事屋に鳴り響いた呼び鐘。これがお通が直々に鳴らしていたとはこの時誰も予想しなかっただろう。
ファンからの脅迫状が何通も事務所に送られてくるらしい。 内容はお通の彼氏、アイドルグループリーダーのGOEMONと別れろとのこと。 自身の父親に相談した結果、銀時を頼ってきたのだと言う。 いつかの時みたく、お通の父親が脱獄されては困る。依頼を引き受けた銀時だが、なんせお通のファンは数知れず。
「別れりゃいいじゃん!別れりゃ全てまるくおさまる話じゃん」
口を挟んだのは不快な音を立てて酢昆布を食す神楽。 手っ取り早いが、言われて別れるぐらいなら付き合ったりはしないだろう。
「い…嫌だよ。そんなの考えられない。 あの人は芸能界で唯一私に優しくしてくれたんだから」
「ケッ!男なんて女には皆優しいもんなんだよ小娘が!!」
と、神楽の頭に木刀が落とされる。 見ると親衛隊のハッピを着用し、復活した新八の姿があった。
番組の収録中、お通が帰って来るまでテレビ局内を探検する神楽と手を引かれる弥生。だが局内にいる人々はあまり見えない。
「有名人に会える思ったアル…」
『楽屋ならいるんじゃない…』
「どこネ、そこ」
『さあ…わかんな』
「あああ!!!」
突然声をあげる彼女。視線の先を見ると、どこかで見たことあるような無いような。
「ぴ、ピン子ネ!弥生ピン子がいたアル!」
『………、ドラマの…』
「私、銀ちゃんに教えてくるアルヨ!!」
そう残すと神楽はもと来た道を戻っていく。ようやく神楽から解放され、一息つくべく椅子へと座る。特に目の置く場所もなく自身の足へと落としていると、コツコツと踵を鳴らす音が右から聞こえ、視界に映った足が前を通り過ぎる――――かと思った。
「新しく入ったスタッフの子でござるか?」
『…?』
顔をあげる。そこにはファミレスでお通と逢い引きしていた時と同じ様にサングラスをかけた、
『………ごえもん?』
「あ、僕のこと知ってるでござるか」
『知らない』
「え。今さっき名前言ってたよね?」
『出口ならあっちデスヨ…多分』
「…遠回しに帰れって言ってるでござるか」
『スタッフじゃないよ…』
「今更でござるな」
まだ番組は収録中だ。何より、騒がれている二人が一緒に出演するのはまずいだろう。別の収録に来ていたのだろうか。
「君の名前は何と言うでごさる」
『…名乗る程の者ではござらぬ』
「ハハ、僕のマネ?カワイイでござるなぁ」
笑うGOEMON。彼のファンなら赤面ものだが弥生は違う。ファンでも追っかけでもない。 表情変わることなく見つめる弥生の手を取ると何かを握らされる。 皆にはナイショでござるよ、と囁くとGOEMONは去っていった。
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