娘の捜索という依頼がきた。もう一週間も帰らないと言う。本来なら警察沙汰だが家柄を気にして大事には出来ないらしい。
という経緯で、銀時達はその娘がよく遊びに来ていたディスコを訪れていた。目に入るのはほとんどが天人。人間は数えるぐらいだ。
大音量で流れる音楽。眩暈がするほどのカラフルな照明、熱気、人の多さ。それら全てが弥生には悪環境だった。


『…帰ろ』

「まだ来たばっかだよ、弥生ちゃん」

「いや、もういいよホント。も〜ホントさぁ〜適当にやって帰ろーぜ」

「ダメですよ!仕事なんですからちゃんとやらないと!」

「んじゃあ…神楽。そこら辺の奴にコレ見して聞いてこい」

「はいヨ」


依頼人から預かった写真を神楽に渡すと神楽は近くのカウンターへと向かっていった。


「あれ、弥生ちゃんどこ行くの?」

『そこらへん…』

「ナンパされそうになったらとりあえず殴っとけよォ〜」

「どんなアドバイスだよ!!」


頭が痛い。今いる場所から脱出したい一心で出口を目指す。廊下へ出れば多少音は和ぎ、一安心する弥生。空いていたイスへ座り、目を閉じるが自分の近くで止まった足音に弥生は視界を開けると、いやらしく笑みを浮かべる天人が二人弥生を見下ろしている。場所を移動すべく立ち上がれば、肩を押され座らされた。


「逃げんなって!どーせ暇してんだろ?」

「暇人同士仲良くやろーや」

「なら俺とも仲良くしてくれるぅ〜?」

「「あ?」」

「まァ、男はゴメンだな〜美人な女なら大歓迎だけど」


突如会話に乱入してきた銀時は天人双方の頭を掴むと容赦なくぶつけ、気絶させた。


『…ぎん』

「ったくお前はァ〜、銀さん言ったでしょ〜殴れって」


母親のような叱り方をする銀時。自分を見上げる弥生の腕を掴み、立たせると入口の前まで引っ張る。掴まれた腕が少し痛くて弥生は僅かに顔をしかめた。


「俺が来なかったらオメーどーなってたと思うよ?」

『さあ…』

「バカヤローちったぁ考えろ。人気のねェとこ連れてかれてあんな事やこんな事やそんな事されっぞ」

『意味わかんない…』

「とりあえずもう一人になんな。新八んトコ戻ってろ」


背中を押され、騒音の中へと戻される。眉をしかめながら振り返ると銀時は別の方向へと足を進めていた。


『…どこ行くの』

「厠」


ヒラヒラと手を振る銀時を見届け、言われた通り戻ることにする。
が、人混みに揉まれ新八達のもとへたどり着くにはしばらく時間が掛かりそうだった。










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