新八の姉・妙は最近ある男に悩まされていた。
それは過剰なまでのストーカー行為。
何度断っても何度殴り飛ばしても諦めてはくれないらしい。


「んだよ、俺にどーしろっての。
仕事の依頼なら出すもん出してもらわにゃ」

「銀さん。僕もう2か月給料もらってないんスけど。
出るとこ出てもいいんですよ」

「ストーカーめェェ!!どこだァァァ!!
成敗してくれるわっ!!」

「なんだァァァ!!やれるものならやってみろ!!」

「ホントにいたよ」


ラーメン屋。店の中で銀時は叫ぶと違うテーブルの下から現れ出たストーカー男。
ストーカーと呼ばれて出てくるとは自覚があるのか。ならば相当に性質が悪い。


『………神楽、食べ終わったの…?』

「私に任せればこんなもん朝飯前ヨ」


隣で繰り広げられる口論に目も耳も傾けることなくずっとテーブルに突っ伏していた弥生は、空になっている大きな丼が気になって聞けば平らげた神楽は得意げに鼻を擦った。流石底無し胃袋を持つ少女である。
弥生が感心していると、ストーカー男はお妙をかけて決闘だと銀時に向かって叫んだ。










「弥生ちゃん、あんまり橋に寄り掛かりすぎると頭から落っこちるわよ」


場所は河原へ移り、橋の上から様子を見ていたが銀時の姿が見えない。
うつらうつらと眠気からけだるくなった体を手摺りへ預けているとお妙から声がかかった。


『決着まだ…?』

「銀ちゃんがまだ来てないアル」

「いくらなんでも遅すぎじゃあ…」


噂をすれば何とやら。
ようやく厠から帰ってきた銀時にストーカー男は早速得物の話をもちだす。
男の得物は真剣なのに対し、銀時は木刀で充分と言う。


「なめてるのか貴様」

「ワリーが人の人生賭けて勝負できる程大層な人間じゃないんでね。
代わりと言っちゃ何だが俺の命を懸ける。てめーが勝ってもお妙はお前のモンにならねーが、邪魔な俺は消える。
後は口説くなりなんなり好きにすりゃいい。
勿論、俺が勝ったらお妙からは手ェ引いてもらおう」


勝っても負けてもお妙がストーカー男のものにならないようにする銀時。だが自分の命を晒すという危険が伴う。
止めようとするお妙だが、男は銀時の男気に惚れたらしい。
真剣を地面へ落とし、新八の木刀を貸すよう声をかける。
と、銀時は男の足元へ自分の愛刀を寄越す。
銀時もまた、男が気に入ったみたいだ。


「勝っても負けてもお互い遺恨はなさそーだな」

「ああ、純粋に男として勝負しよう」


新八から木刀を受け取り、双方構えると共に地を蹴る。
銀時へ木刀を振り下ろそうとした時、男はあることに気付いた。

刀身がなくなっている。

慌てて制止の声をあげるが銀時は聞く耳もたず顔面へ一撃を入れた。


「甘ェ…天津甘栗より甘ェ、敵から得物借りるなんざよォ〜
厠で削っといた。ブン回しただけで折れるぐらいにな」

「貴様ァ、そこまでやるか!」

「こんなことのために誰かが何かを失うのはバカげてるぜ
全て丸くおさめるにゃコイツが一番だろ」

「コレ…丸いか?…」


その言葉を最後に男は気を失った。
見事な決着をつけたと得意げに上にいる弥生達へ声かければ新八と神楽に踏み潰される。


「あんなことまでして勝って嬉しいんですかこの卑怯者!!」

「見損なったヨ!!侍の風上にも置けないネ!!」

「お前、姉ちゃん護ってやったのにそりゃないんじゃないの!!」


首フックや蹴られている銀時を上から傍観していると隣で笑い声が聞こえた。
見るとお妙と目が合い、微笑むと銀さんにお礼言っておいてね、と弥生に残し帰っていった。
その後ろ姿を見届けた後弥生は橋の手摺りに乗り、銀時がいる近くへと降りる。彼の姿は新八と神楽によってボロボロだった。


「俺何か間違ってた?」

『…ありがとうだって』

「?」

『お妙が…』


髪についている汚れを払いながら弥生はお妙の伝言を伝えると一つのあくびを零し、自分も帰るべく踵を返す。
続いて銀時も弥生の隣に並ぶ。


「弥生〜これから銀さんとデートでもすっか?」

『いや』

「たまにはいーじゃねーか。そーだなァ、パフェでも食いに行こうぜ」

『いや』

「オメーどんだけ嫌なの?そんな拒絶されっとさすがに傷つくわー…」










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