花火のような轟音で目が覚める。 首に走る鈍痛に顔をしかめながら弥生は辺りを見ると車の中は何故か自分一人だけだった。 寝ていたからとはいえ、見張りも付けずに残すとは如何なものか。 手錠で不憫になった両手に苦労するも弥生は車を降り、空を仰ぐ。 さっきの音は何だったのだろうか。 ふと、視界に入った垂れ幕がかかっているビル。髪の量が増している銀時が幕にしがみついている姿を発見する。 と――
『…!』
ガキィンッ
「なっ…女!?」
背後から迫る殺気に、咄嗟に手錠の鎖で振り下ろされた刀を受け止めると男は目を見開いた。 まさか止められるとは思っていなかったのか、自分の性別に驚いたのか、それとも両者か。
「悪かったなァ、そのナリに刀ぶら下げてっからてっきり逃げ遅れた攘夷志士かと思ってな」
女を斬る気はないのか、男は刀を鞘におさめる。 その様子を一瞥し、弥生は男に背を向けると今もなお懸命に下へと降りている銀時のもとへ足を運ぶ。 が―――
「待てコラ」
道着の襟首を掴まれ、それ以上進むことは叶わなかった。
「どこ行く気だてめェ…まさか逃げるんじゃねーだろーなァ」
『帰る…』
「帰るだァ?オメー自分についてる手錠が見えねェのか」
『外しておくれ』
「ふざけんな誰が外すかァ!!さっきから何なんだお前ェ! 帰るだの外せだの警察ナメてんのか?おちょくってんのかコラ、あァ?」
「おちょくられてんですかィ土方さん。副長ともあろうお方が何やってんでィざまあみやがれコノヤロー」
『コノヤロー』
「お前らそこになおれェェェ!!二人まとめて叩き斬ってやらァァァ!!!」
再び抜刀する土方と呼ばれた男。怒り狂う彼の目は瞳孔全開だ。 対する弥生は怯える様子もなく退屈そうに欠伸を零し、突如現れた青年はニヤリと笑みを浮かべると刀を抜く。 今にも斬り合いが始まりそうな雰囲気だ。 眠い。下がってくる瞼にそう思い、弥生は踵を返し歩き始める。 後ろでは凄まじい刀のぶつけ合いが起きていた為、弥生を止める者は誰もいなかった。
「いくら時間がなかったとはいえよォ…何もおもいっきり殴ることねェだろ。神楽のやつ…一度シメた方がいいな、そうしよう」
『ぎん…』
「あららら、弥生じゃねーの。どしたのお前、いつもなら寝てる時間でしょーよ。あ、もしかして寂しくなって俺に会いに来たの?じゃあ遠慮なく銀さんの胸に飛び込んで来なさい」
『コレとって』
「おいおい弥生、オメーどこでそんなプレイ覚えてきたんだよ。 手錠っておま…」
「いた!!いましたテロリスト!ここです!!」
「やっぱ嬢ちゃんもテロリストの仲間だったか!可愛い顔してコノヤロー!!」
「いやいや俺達テロリストじゃねーよ。つか見たでしょ?爆弾処理したじゃん」
「言い訳なら後でたっぷり聞いてやる。来い!」
結局、万事屋メンバー全員警察の取り調べを受けるハメになるのだった。
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