05

あれ、君この間の子だー!

そんな声が聞こえたのは本日もあまり活気に溢れることのないコンビニエンスストアで眈々と棚卸しをしている時だった。そろそろ腰が痛くなってきたから休憩しようかな、と顔を上げたらばちり、と合った視線。
私も覚えてますとも先日肉まんを買いにいらした金髪の彼。売るものがなかったのだけれど。

「こんにちは、いらっしゃいませー」

にこりと気持ち微笑んで挨拶をする。
今日は肉まんからピザまん、あんまん、そしてチャーシューまんまで全て揃っている。好きなものを好きなだけ買って行くがいい。
心でドヤ顔をすると、一先ず棚卸しは辞めてレジへと向かった。

「俺結局あの日肉まん食べられなかったんだよー」

何の報告だよ。
商品を何も持たずレジの前に立つと金髪の彼はそう言った。そしてそのお隣に並ぶのは赤髪の彼。そう、いつかに笑顔が素敵すぎて佐藤さんに報告してしまった人だ。この2人はもしかすると、もしかするのだろうか。そう、オトモダチってやつ。

「お前の知り合いなの?」

「知り合いって言うのかなあ〜?」

私の方へ向き首を傾げる彼。さあ?と私も同じように首を少し傾け返す。ただの店員とお客だよ、なんてことは思っているだけにしておくあたり、面倒を嫌う性格がよく出ている。

どうしてかただの店員な私に興味深々な様子が伺える二人。犬のようにも見えるから二匹とも言えよう。
金髪と赤髪という不良真っ盛り、ヤンキーど真ん中、そんな二人がレジの前を陣取る=新手のカツアゲにも思われてしまう光景に私は心の中で溜め息をついた。
いい加減、どいてくれないだろうか…。
何やら二人であーだこーだと喋り出した。お前が聞けよ、とか知り合いなんだろ、とかはいはい分かりましたよ言えばいいんでしょ、言えば。

「浅井佳菜子」

「え?」

私が名前を名乗れば目をキョトンさせ、言い合いは収まった。
目の前で店員の名前聞けよトークされれば答えないわけにもいかない。これでどいてくれるだろう、目的を果たしたんだから、お二人さんは。
いくら暇なコンビニバイトとはいえ、やる仕事はあるのだ。このままでは佐藤さんに叱られてしまう。
用がないならレジ周りから離れてください…そう言おうとした時、二人は一気に言葉を発した。生憎の、聖徳太子ではない私の耳はどちらも聞き取れるわけがなく、仕方ないから聞き返すしかなかった。

「オレ!芥川慈郎!」
「俺は向日岳人!」

「よろしくな!」

こうして新たにオトモダチが増えました、二人。

あ、佐藤さんに報告しなきゃ。

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