02

さーて、今日も頑張るぞ。
気合いを入れてユニフォームの袖に腕を通す午後5時。この時間から5時間。それが私の定番の勤務時間なのである。
カウンターに向かえば珍しく一つのレジに対して列が出来ている。どうぞこちらでも承りますよ、と休止中の看板を取り下げ二番目の方ーと呼ぶ。
いらっしゃいませーとあまり力の入らない声を出して商品を受け取り、事務作業の如く値段を言って、流れ作業のように袋詰めされたビニール袋を差し出す。
お金を受け取りありがとうございましたーと言っても立ち去らないお客。不審に思いレジに小銭をしまった後頭を上げれば赤い髪をした男がいた。
え、どこぞの不良?
怖い怖いと思いながらもその場から退かない彼にあの、と弱弱しく声をかける。

「スプーン、くれね?」

「え?」

「いや、だからアイスのスプーン」

そういえば入れるの忘れてた。
慌てて引き出しから取り出し、失礼致しましたと詫びながら渡す。てめえちゃんとしろよ!とか怒鳴られませんようにと祈りながら。
そんな私の祈りと反対に赤髪の彼はそれはそれは素敵な笑顔を向けて来た。

「さんきゅ!」

はにかみ気味な笑顔と共にそう言ってコンビニから出て行った。
人を見かけで判断してはいけないと、この時学んだのだ。


「佐藤さん、佐藤さん」

「なに?」

「見ました?今の」

一通り並んでいたお客さんの会計を済ませると佐藤さんの隣にスススと移動して割と小さめ声で話しかける。
めんどくさそうに受け答えをする佐藤さんはいつものことだからあまり気にせず、赤髪の男のことを話した。

「へえ、よかったね」

「また来ないかなあ」

「この辺住宅街だし、来るんじゃない?勘だけど」

佐藤さんの勘はよく当たると有名なのだ。私達バイトの中だけだけど。
また来て欲しいなーそんでまたあの笑顔見たいなー来ないかなー来ないかなー。
そんなことを思って肉まんを保温機に入れていたら大変なことになった。上からしたまで肉まん一味のみ。しかも一つの棚に9個と言う詰め詰め状態。
やばい、こんなの見つかったら怒られる。慌てて袋に戻して冷凍庫に入れる。
危なかったー。良かったよすぐに気付けて。と思ったのも一瞬のこと。

「ちょっと浅井ーなにしてるのあんた」

「え?」

冷凍庫を開けた佐藤さんが怒ったような声をあげる。

「なんで肉まんの袋全部開けてるのよ」

「あは」

赤髪くんのこと考えてました、と素直に言ったら溜め息をつかれて棚卸しでもしてなさいと言われた。渋々お菓子の棚に行く私の後ろから佐藤さんの声がかかるのは当然のこと。
あー早くバイト終われ!

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