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「よっし、さあお昼ー!」
「お、おい」
「ん?」
4時間目終了を告げるチャイムと共に立ち上がる、隣の席にいる彩華。
まだ挨拶もせずに立ち上がった彩華に対し、先生が睨みを利かせているがそんなの気にしてられない。
「なによ、ブン太」
「お前その手に持ってる弁当…」
俺がいきなり声をかけたことに不思議そうな顔をする彩華の手には、2つの弁当箱。
しかもその内の1つはいつも俺が持ってきてる物。
「ん、あ、これ?ブン太が忘れたからって朝おばさんに渡されたやつ」
「あれ、俺忘れたんだっけ…」
不審に思ってバック内を探すが確かに入っていない。
本当に忘れてたのか、彩華が居なきゃ危うく今日の昼は無くなるところだったな。
「朝練来なかったことはアレだけど、そのおかげで弁当がここにあんだから感謝するぜ」
「そ、ありがとう」
「おお………って、おい」
「なに、」
お弁当の包みを開けようとする度に止める俺を、彩華は思いっきり睨み出す。
俺も止められる時の気持ちは嫌って程分かるが、何もそこまで睨むことねえだろ。
「なにじゃねえよ、弁当」
「うん、これから食べるけど」
「いやいやそれ俺のだろぃ!」
「確かにおばさんにはブン太の弁当って言って渡されたけど、ブン太に渡してなんて言われてないからこれは私の」
そう言ってまるで駄々を捏ねる餓鬼みたいな目を向けてくる。
だからと言って俺は弁当を諦める気はさらさらない。
「俺だって腹減ってんだから、よこせ」
「へーそうなの、それじゃあ私はお昼だから」
「おいおいおい」
「もう何よ」
「俺の弁当は置いてけって!」
そんなさも当然のように弁当箱2つ持って、教室を出ようとする彩華の腕を必死に掴んで止める。
周りの目なんて気にしてらんないくらい俺は腹が減ってるんだ。
「ちょっと離してよ、お腹空いてんの、プリンなの」
「ちょっと待て!今最後に何て言った?」
「プリン、今日はプリン奢ってもらうんだから」
「………誰に?」
まただ、また嫌な予感がする。
なんだろう、前とは違ってかなり当たる気がする。
「………」
「お前、まさか本当に?!」
「だって奢ってくれるって言うから」
「だからって後輩に奢らせんのは…」
「は?」
「え?」
俺が「駄目だろ」って言おうとした瞬間有り得ない程馬鹿にしたような、怒り混じりの声が聞こえた。
凄い眉間に皺を寄せて言う彩華に思わず俺は後退ってしまう。
「なに言ってんの、いくら私でも後輩にたかったりしないよ」
「じゃあ誰に?」
「先生」
「もっと駄目だろ!」
「だって向こうから…………あ」
「え?」
大きく、まるで驚いた時の柳くらい開眼する彩華に何事かと思って廊下の方に振り向くと、幸村くんが微笑み、いや口だけ笑いながら立っていた。
幸村くんの口が動く度、俺の顔は真っ青に近くなっていたと思う。
「今日の昼は集合してって言ってあるよね?」
腹が減っては戦は出来ぬ。
隣のあいつ
「はい、お弁当」
「ああ、サンキュー」
「ちなみに中身は2時間目の終わりに食べたから無いよ」
「はああああ?!」
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