女の子の日の彼
痛い、苦しい。
廊下の隅で丸くなって私はお腹を抱えた。腰は絶妙に重たくて、下腹部がズキンズキンと痛む。こんな思いするなら学校なんて休めばよかった。次第に朦朧としてくる意識。いやだいやだ、誰か助けて。上げられない声を心で叫んで、目尻に涙が溜まってきた時だった。
「おい!どうした!?」
肩を触られ、頭上から降りかかる声。見上げようとしたところで私の意識はブラックアウトした。

目を覚ますと、真っ白な天井が目に入り、ツンと鼻をつく薬品の匂いでここが保健室であることはすぐに分かった。相変わらず下腹部や腰は痛いが、さっきよりはマシになってることに安堵してカーテンの隙間から外を覗く。白衣を着た養護教諭の向かいに座っていたのは意外な人物だった。
「日吉……?」
驚いて起き上がろうとしたものの、くらりとまた視界が歪む。
「大丈夫か?」
「どうして、日吉がここに……」
「アンタが倒れるからだろう!?」
少し怒ったような表情で声を荒げる。
すると先生が少し笑って私達の会話に口を挟んだ。
「彼ね、あなたを抱えてきたのよ。それはもうすごい慌てて」
図星だったのか日吉は先生の言葉にバツが悪そうに呟いた。
「……アンタが、真っ青な顔してるから」
そこでやっと私は理解する。廊下で蹲っていたまま意識を飛ばしてしまったんだ。それを日吉が助けてくれたんだ。
「貧血らしいな。まだ顔色が悪い」
日吉は私に近づくと、そっと頬を撫でてくる。悲しそうな表情に申し訳なさでいっぱいになった。
「もう少し寝てろ、アンタのクラスは今体育だろ。俺が伝えてくる」
クラスの違う日吉がどうして私のクラスの授業を知っているのか。
「放課後は俺が送る。待ってろよ」
「でも日吉、部活は……?」
「アンタを送ってから出る」
どうして彼がこんなに心配してくれて、どうして彼がここまで私を気遣ってくれるのかが分からなかった。
「とにかく今は寝てろ。いいな?」
グイッと肩を押されて、起き上がっていた体を無理やり寝かせられる。
「先生俺行きますので、後お願いします」
まだぼうっとした頭で日吉の後ろ姿を見つめていると、先生が慈しむような表情で言った。
「あなた愛されてるわねえ」

この意味を知るのはまだ先のこと。

奥山ゆう /
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