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「ふぁぁぁ…今日も日ノ本は平和だわ…」



鈴風は大きな欠伸を一つした


因みに今彼女がいるのは、大阪の上空。


銹丸の脚に捕まりながら、下から風の婆沙羅にて上昇気流を作り、彼女はふわふわと浮かんでいた



「おお、ソコにおるのは鈴風ではないか」


「ヤッホー刑部、久しぶりー」



鈴風は隣に浮いている男―――大谷義継に声をかけた


日ノ本広しと言えども、宙にいる彼女と会話できるのは彼と忍連中ぐらいだろう

徳川の本多忠勝も飛べるが、速すぎて彼女を追い抜かしてしまうのだ



「たまには大阪に寄りやれ。三成も軍師殿もそなたを恋い焦がれておるぞ」


「んー、そーだね。
久々に会ってあげるかー。
銹丸ー、大阪城で降ろしてくれない?」



銹丸は弧を描き、徐々に下へ下へと降りていく


軒ほどの高さになったとき、彼女は手を離して落下した


空中でくるりと一回転して庭に降り立てば、ふわりとした銀髪の男がパチパチと手を鳴らす



そして彼女に近付き、その左手の甲に軽く接吻を落とした



「久方ぶりだね、鈴風。そちらから来てくれるなんて、嬉しいよ」



銀髪の男―――竹中半兵衛はそう言ってふわりと微笑み、彼女を抱き寄せる


鈴風は少し、ほんの少しの間だけ黙って抱き寄せられていたが、すぐに彼から離れた



「……酷いな、何故離れるんだい?」


「そりゃこの前来たときあんたに軟禁されかけたからだよ。二の舞は踏まん。絶対」



彼女はそう言って、降りてきた銹丸に興味を反らす


不満そうな顔の半兵衛の近くに、刑部が笑いながら降りる。



「ヒヒッ、軍師殿、どうやら前回のことで鈴風に警戒されてしまったようですナァ」


「だって放っておくと、彼女はすぐに何処かに行ってしまうじゃないか。僕は彼女をずっとそばに置いておきたいんだ」


「だからそれが嫌なんだって!いつも言ってるじゃん、私は風、風は一つの場所には留まらないのよって」


彼女は声高らかに言った




そう、彼女は自由を愛し、縛られることを嫌った


だから、巷の人々はみな彼女をこう呼ぶのだ



「風来嬢」と。






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