「どうせならよ、ギルドのパーティを二日連続でやってくれりゃ良いんだよな」
「イヴまで拘束したら悪いわよ。今年も例年通り、24日はランチだけ営業」

ミラジェーンが困ったように首を傾げた。面倒くさそうに頭を掻いたグレイから、ちらりとハッピーに視線を走らせる。
ナツも自然にそれを追った。青い猫は腕を組んで難しい顔をしている。

「ハッピー。シャルル、誘ってみるの?」
「う、うん。そうしたいけど。でも二人きり、って断られないかな?」
「どうかしら」
「シャルルのことだから、ウェンディも一緒じゃないと、って言いそうよね」

リサーナは溜め息交じりに言って、グラスを下ろした。かちん、とぶつかる音がする。
ハッピーが顔いっぱいにどうしよう、と書いて見上げてくる。ナツはぱちん、と指を鳴らした。

「家に呼べば良いじゃねえか」
「え?」
「24日、ウェンディも一緒にパーティしようぜ!ギルドのパーティの前夜祭だ!」
「元々クリスマスの前夜祭だよ」

ハッピーはグレイの冷たい声には反応せず、目を輝かせた。

「良いの?」
「おう、ウェンディは……って、まだ来てねえか。今日誘って来いよ」
「あい!」

リサーナがふぅん、と相槌を打った。

「良いなあ、私も行きたい」
「おう!…って、なんだよ。やっぱお前も予定ねえんじゃん」
「今年はね」
「ほー。ミラとグレイはどうするよ?」
「私はまだ予定わからないわ。マスターに用事頼まれるかも」
「そっか」
「オレは……そうだな」

グレイは声を潜めた。

「行く。けど、今は秘密にしといてくれ」
「あん?」
「突撃されそうだろ」
「どうせされるんだから先誘っとけよ」
「あのなあ…んなことしたらまた暴走するだろうが」

それこそどうしたところで暴走するのだから、と思わなくもない。しかしナツはそれ以上追及せずに「そうかよ」とだけ返した。
グレイはジュビアを嫌っているわけではない。それは長い付き合いからわかる。きっと放っておいても、ルーシィが彼女を誘うだろう。可哀想な人間は一人も出ない計算になる。

そうだ。

「ルーシィにも言っとかねえとな」
「そういえば」

ハッピーがぴくりと耳を動かした。

「ルーシィ、ロキとデートかも」
「へ?」
「だってロキ、言ってたよ。ルーシィを本気で誘ってみようかなって」

初耳だった。しかしロキならば、そういう行動も不思議ではない。クリスマスに女性を誘う、ということであれば、の話だったが。
ナツは口を尖らせた。

「ロキなら他にいくらでも女居んじゃねえか。なんでルーシィなんだよ」
「あいつにとってルーシィは特別だろ」

それもわかっている。しかし気に入らなくて、ナツはグレイを睨み付けた。どいつもこいつも、24日におかしな意味を付け過ぎる。ただクリスマスの前の日というだけなのに、どうしてデートになるのか。皆でわいわい騒いで、それで良いじゃないか――。

グレイが眉を上げたのと同時に、その肩越しに金髪が見えた。ナツはすぐさま入り口に目を移す。
ルーシィが入ってきたところだった。






「ルーシィに言っておく」であって「ルーシィを誘う」ではないナツの意識。


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