「ウォーレン、言いふらすなよ」
「当たり前だ。オレはプライバシーに関しちゃうるさい男だぜ?」

この魔法は、勝手に相手の考えを読むことだって、やろうと思えば出来る。モラルが高くないとすぐに信用を失ってしまう。
ウォーレンは自己抑制力には自信があったし、誇りでもある。こう見えても、妖精の尻尾の中で一番口が堅いのは自分だ、と思っている。

『え?』
「こっちの話。とにかく、泊まってくからな。決定!」
『えー』

ルーシィは渋ったが嫌そうではなかった。ウォーレンはやれやれ、と肩を竦める。

「決まったか?じゃあ切るぞ」
「あ、悪ぃ、もうちょい」
『ん?まだ何かあんの?』
「いあ、ねえけど」

ナツはあっさりと言って、頬を掻いた。

「なんかこう…いつもより近くに居るみてぇだろ?すぐ切るの、もったいねえじゃん」
『なっ、えっ』
「ルーシィはそう思わねえの?」
『あ、あたし?あたし、は』
「うん」
『ちょ、ちょっと、そう思う…かな?』
「…今、どこだ?」
『え?えっと』

ルーシィは商店街の入り口付近を答えた。ナツが復唱して、こくりと頷く。

「わかった、今から行く。動いてても良いぞ、匂いで追えるし」
『匂いってなんかヤダ!せめて香りとか言いなさいよ!』
「はっはっは」
『笑ってんじゃないわよ!?…待ってるからね!』

それを合図に、ぷつ、と念話を切る。
ナツはウォーレンから手を放して、ふう、と息を吐き出した。

「便利だよなぁ。オレも念話覚えたい」
「出来ればそうしてもらいてえよ」
「でもやっぱ、……直接会いたくなるな」

ナツは本に目を落として自嘲気味に笑った。その表情が普段の彼からは想像できないほど大人びていて、虚を突かれる。
言葉を失ったウォーレンの肩を、ナツがぽん、と叩いた。

「さんきゅな、また頼むわ」

ウォーレンはにっこりと笑った。

「嫌だ」

はっきり、きっぱり。聞き間違いようのないほど明瞭に、断る。ここ最近で一番清々しい気持ちだった。
ナツは面食らったような顔をしたが、ぷぅ、と頬を膨らませた。

「ちぇ。…じゃあな」

片手を上げて、軽い足取りでギルドを出て行く。その後姿を見送って、ウォーレンはこきり、と首を鳴らした。

ナツは気付いていない。
自分がどれだけ大声でルーシィと会話していたのか。
その様子をどれだけ周りに注目されていたのか。

自分は口が堅い。何も言っていないし、これからも何も言わない。
だから、自分のせいではない。

ど真ん中のテーブルを簡易ステージにして、マックスがマイクを握る。

「今日のナツは頑張ってるぞ!さぁ、張った張った!」

ウォーレンはしばし考えて。
『告白できない』に賭けようと、財布を取り出した。






念話じゃ足りない。
お付き合いありがとうございます!



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