「はい、グレイ」
「さんきゅ」
いらっとする。なんだよそれ。
むっとしたオレに気付いてるくせに、ルーシィはこっちを向かない。でも、見ないで見てる。それくらいわかる。
ほら、やっぱり。
「これはあたしとグレイが半額ずつ出したの!」
それをオレから遠ざけて、ルーシィが言う。
そんなの知ってんだよ。暑い暑いって、二人でぶつぶつ言ってたときからずっと隣に居たんだから。
二つに割れるアイスキャンディー。グレイと半分こするなんてわかってたら、オレだって暑いって言ってたっつーの。
グレイは溶けそうな顔して(溶けちゃえば良いんだ)、それを口に入れてる。また何気なく脱ぎだしたから、オレは見ないようにした。今日だけでもう二十回目だ。捕まれば良い。で、全裸で留置所入って、頭の心配されて病院入ってりゃ良いんだ。もう出てくんな。
ルーシィとアイス半分こなんてした奴、処刑されろ。
「あんた、暑くないんでしょ?」
ルーシィはオレがアイスを食べたがってると思ってんのか、そんなことを訊いてくる。食いモンくれるなら喜んで貰うけど、今オレが食べたいのはアイスじゃねえ。ルーシィと半分こ、だ。パクン、て割れて、ルーシィが持ってるのとぴったり合うアレが欲しかったんだ。
だから、それ以外は要らない。
「買ってきたら?案外安かったわよ」
「要らねえ」
「何不貞腐れてんのよ」
「そんなことねえもん」
「もう……一口だけだからね?」
「……」
ひょい、と差し出されたそれは、触れてなくてもひんやりと冷たい。ルーシィは呆れたような顔で、こっちを見てる。
食えって?これを?お前、今齧ったじゃねえか。
「る、んっ、ふもっ」
何か言おうとして開いた口に、アイスが押し込まれた。良いも悪いも、考える暇がねえ。
オレに強引に食わせたのはそっちなのに、ルーシィは目を吊り上げた。
「あ、一口って言ったのに!」
「もご、ほれがほれのひとふひ」
「ちょ、もうダメ、こら!」
甘い。冷たい。美味い。
ルーシィは喚いてうるさいけど、笑ってる。だからほら、やっぱ、楽しいんだ。オレと同じで。
グレイは溶けるしルーシィは裏切ってオレじゃない奴とアイスを分け合うけど。夏ってやっぱ、楽しい。