ナツはギルドの隅でむっとしながら座っていた。隣には、同じように包帯でぐるぐる巻きにされたグレイ。二人は隔離されるようにギルドの輪から取り残されている。魔法はもう切れていた。
怪我のほとんどはエルザから食らったお仕置きのせい。しかし彼の機嫌を損ねているのはそんなことではない。

「んだよ」

ルーシィがちらちらとこちらを気にしている。

「言いたいことあんなら、言えっつの」

ざわめく酒場と小さな呟き。それが聞こえたはずはないのだが、ルーシィは立ち上がった。真っ直ぐ、ナツとグレイの元に近付いてくる。

「……なんだよ」

ハッピーに言わされたとはわかっている。しかし胸を抉られた痛みが、ナツの声を尖らせた。
ルーシィは足元を見ながら、もじもじと指を弄った。

「な、ナツは別にいつも遊んでるわけじゃなくて、仕事もちゃんと行くし」
「へ?」
「報酬は貰えないこともあるけど、そのっ」
「ルーシィ?」
「地に、足…つっ、着いてると思ってるからね」

「あたしは」ぼそぼそと付け足したルーシィは、ぽかん、と見上げたナツと目が合うなり、真っ赤に染まった。さかさかと同じ方の手と足を出して、ギルドから慌てたように出て行く。
ナツは開いていた口を閉めた。また、開ける。

「オレ、今浮いてねぇか」
「あ?」
「……へへ」

幸せすぎて、ふわふわする。
グレイはつまらなさそうにそっぽを向いた。

「いつも浮いてんだろうが、世間から」

今日だけは、そんな暴言も心の底から許せそうな気がした。






どきどきうきうき。


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