「ミラ、アイス乗っけてくれよ。払うから」
「アイス?良いわよ。バニラで良い?」
「うん。あと、メープルシロップ」
「はい。珍しいわね?ナツがそんなにアレンジするなんて」

まだ熱いトーストに、乗せられたバニラアイスがするりと滑る。それを観察するように見入ったまま、ナツはさらりと否定した。

「オレじゃねえよ、ルーシィだ」
「え?」

声が頭の上を突き抜ける。
ナツは驚いたルーシィを見て、不思議そうな顔をした。

「この前、これが好きだって言ってたじゃねえか」
「…よく覚えてたわね」

この前と言っても、三ヶ月は前の話だった。しかも実際食べたわけではなく、会話の流れでそういう食べ方が好き、と話しただけ。正直、言われるまでルーシィ自身、忘れていた。
ナツは何を言ってるのかわからない、と言わんばかりに目を瞬かせた。

「当たり前だろ?オレ、ルーシィのことなら覚えてるもん」
「え…な、なんで?」
「面白ぇからなあ、ルーシィは。印象強ぇよ」
「……もぉ良い」

何度繰り返しても学習できない。
騒ぎ立てた鼓動が悔しくて、手に力が入る。結局確認もせずに、ルーシィはナイフを突き立てた。アイスの上から真っ二つにそれを割り、大体一口サイズになるよう、切り分けていく。
積み重なったフレンチトーストを持って、ミラジェーンが目の前を横切った。カウンターを出て行く彼女の、ふわりと靡く銀色の髪――

ナツが肘を突いた。

「ルーシィ」
「何よ?」
「好きだ」

キィ、と皿が不快な音を立てた。

「――え?」

不意打ちどころではない。
満足な反応もできず、ただ呆然と頭を動かす。
目が合った瞬間、ナツがにやりと笑った。

「って、言って欲しかったんだろ?バレバレだっつの」
「は…?え、あ?」

思考が追い付かない。
好きと言われたことすら飲み込む前に、爆弾を口に押し込まれたようだった。それが爆弾だと理解するのさえ、一瞬でとはいかない。
ナツは口元を意地悪げに歪めたまま、ルーシィを覗き込むように身を乗り出してくる。満腹になるまで食わされた肩透かしの経験が、彼の本意をルーシィに告げた。

からかわれた――?

血の気が引いて、頭が重くなる。目の前が、霞む。
俯く直前、ルーシィの肩に桜色が触れた。

「つか、ミラの前じゃ言わねえよ」

叱責するような、囁き。

「え」

すい、と離れていったナツは拗ねたように口を尖らせていた。瞬きも忘れたルーシィを通り越して、ちらりと彼女の後ろに視線を送る。

「なあに?今、私のこと言わなかった?」
「言ってねえ!」

戻ってきたミラジェーンに、ナツがぶんぶん、と首を振った。






オレに言わそうとしてんの、わかってんだからな。
お付き合いありがとうございます!



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